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読んだら忘れない読書術』

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No.1156


  『読んだら忘れない読書術』樺沢紫苑著(サンマーク出版)を読みました。

 「精神科医が教える」というサブタイトルがついています。
 著者は1965年、札幌生まれの精神科医です。91年、札幌医科大学医学部卒。2004年からシカゴのイリノイ大学に3年間留学。帰国後、樺沢心理学研究所を設立しています。

 

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   本書の帯

 


 本書の帯には「『本を読んでも忘れてしまう』『時間がたつと覚えていない』・・・・・・」「こうすれば、記憶に残すことができる!」「毎月30冊の読書をこなし、毎日40万人に情報発信! 異色の精神科医が教える、脳科学に裏付けられた、本当に役立つ読書とは?」「『アウトプット読書術』『スキマ時間記憶強化読書術』『5分・5分読書術』『数珠つなぎ読書術』・・・・・・」と書かれています。

 

 本書の「目次」は、以下のような構成になっています。


「はじめに」
第1章 なぜ、読書は必要なのか? 読書によって得られる8つのこと
第2章 「読んだら忘れない」精神科医の読書術3つの基本
第3章 「読んだら忘れない」精神科医の読書術2つのキーワード
第4章 「読んだら忘れない」精神科医の読書術 超実践編
第5章 「読んだら忘れない」精神科医の本の選択術
第6章 早く、安く、たくさん読める究極の電子読書術
第7章 「読んだら忘れない」精神科医の本の買い方
第8章 精神科医がお勧めする珠玉の31冊
「おわりに」

 

 第1章「なぜ、読書は必要なのか? 読書によって得られる8つのこと」では、「ネット時代とは文章力が試される時代である」という以下のくだりが興味深かったです。


「『文章力』というのは、実はインターネットの時代となった現在、極めて重要になっています。会社の通達やお知らせもメールで来るし、日報や報告書もパソコンで文書にしないといけない。一昔前であれば、直接話し、直接伝えていたのが、最近では『文章』を通じた『書く』『読む』ことによってコミュニケーションをする割合が飛躍的に増えています。
 仕事に限らず、友達との交流や恋愛、さらに夫婦や親子の交流、連絡も『メール』『メッセージ』なしでは考えられません。つまり、自分の考えを文章で的確に表現できる人は、仕事で成功する。また、自分の思い、気持ちを文章で的確に表現できる人は、友人や恋人、家族と上手にコミュニケーションができ、友情と愛情に包まれた生活が送れるのです。 
インターネットの時代では、『文章力』は絶対に不可欠な『仕事力』だといえます」

 

 また「本を読めば、ストレスと不安から解放される」という以下のくだりには、非常に共感しました。


「本を上手に活用できる人は、ストレスが緩和され、『悩み事』でクヨクヨすることから解放されます。しかし、この事実は、ほとんどの人が知りません。なぜなら、読書家は問題や悩み事に直面しても、『本』を参考にして、早期のうちに解決してしまうので、大きなストレスや厄介な悩み事に煩わされること自体がないからです。
 一方で、滅多に本を読まない人は、『悩み事』を抱えたとしても、『本を読んで問題解決をしよう」』とは思いません。過大なストレスに支配され、大きな『悩み事』を抱えたとき、人は『視野狭窄』に陥ります。目先のことしか考えられなくなり、頭に思いつく選択肢が減っていくのです。普段から本を読む習慣がない人は、『本を読んで問題解決しよう』という発想すら浮かばないということです」


 著者は「解決法を知るだけでストレスは軽減する」として、「『どうしていいかわからない』状態において、最もストレスが強くなる。対処法、解決法を調べて『何とかなる』(コントロール可能)とわかっただけで、状況は全く改善していなくても、ストレスの大部分はなくなるということです」と述べています。
 わたしは『死が怖くなくなる読書』(現代書林)という本を書きました。
 そこで、さまざまな「死」についての本を紹介しましたが、じつは読書という行為そのものに「死」が人間に与えるストレスと不安を解放してくれる効果があります。

 

 なぜ読書がストレスと不安を解放してくれるのかというと、それは本に書かれている言語情報の力です。著者は、言語情報について次のように述べています。


「不安というのは、脳の『扁桃体』という部分と関連しているということが脳科学の研究でわかっています。『扁桃体の興奮』=『不安』という図式です。
 うつ病とは、ストレスに長期にわたってさらされたために、『扁桃体の興奮』のスイッチが持続的にオンになって戻らなくなってしまった状態だと考えられています。ですから、うつ病の患者さんは、常に不安で、何でも悪いほうに考えてしまいがちです。
 逆にいうと、『扁桃体の興奮』を鎮めれば、不安を減らせるということです。脳機能イメージングを使った研究によると、『言語情報』が脳内に入ってくると、扁桃体の興奮が抑制され、それにともないネガティブな感情は静まり、気分も改善され、決断能力が高まることが観察されました」

 

 さらに著者は、「情報」が人間に与える影響について書いています。


「『情報』は、人間の不安を和らげてくれるのです。
 『脳への言語情報の流入』というのは、『話す』『聞く』『読む』などさまざまなパターンがあります。その中でも人に相談する、人から情報を得るのが最も効果的なのですが、『話す』『聞く』には相手が必要です。しかし、「読む」のに相手は必要ありません。本1冊分のお金があれば、誰にでも、自分1人で、すぐに実行可能です。
 心配事があれば、その対処法について書かれた本を1冊買ってきて読めばいい。『言語情報』によって不安は軽減し、『解決法を知る』ことでストレスも軽減するのです。本を上手に利用すれば、不安やストレスのかなりの部分を減らし、そしてコントロールできるようになります」

 

 著者は「読書脳活性化理論」というものを提唱しています。
 「人間の脳は一生成長し続ける」として、著者は次のように述べます。


「脳科学研究の進歩で、脳細胞は20歳をすぎても分裂、成長し、さらにそれは一生続くということがわかりました。特に、神経細胞が枝を伸ばして、他の神経細胞とネットワークを構築するという『脳のネットワーク構築』は、一生にわたって行われます。脳のトレーニングによってネットワーク構築を活性化することもできますし、一方で脳を使わなければ、鈍化し、記憶力も低下し、認知症へと一直線です。
 人間の能力は生まれたときに決まっている、というのは大間違い。あなたが30歳でも、40歳でも、50歳でも、今から伸ばすことができます。人間の能力は、脳を鍛えることによって、一生伸ばし続けることができるのです」


 本書には、「私の人生を変えた『運命の1冊』」というものが紹介されていますが、その書名を見て仰天しました。なんと、夢野久作の『ドグラ・マグラ』だったからです。この天下の奇書について著者は次のように述べます。


『ドグラ・マグラ』は、奇妙奇天烈な小説です。日本三大奇書の中の1冊とされ、この本を読むと『必ず一度は精神に異常を来たす』といわれます。それは言いすぎだとしても『精神世界』の奥深さと不思議さを実感させる小説であることは間違いありません。『ドグラ・マグラ』を読んで私は思いました。『精神医学という学問は、なんて奥深いんだ。これから自分が一生をかけて取り組んでいくテーマは、これしかない!』」


 いやあ、この著者、ハンパではありませんね(笑)! 気に入りました!

 

「成功している経営者の共通点とは?」では、著者が友人の経営コンサルタントに「成功している経営者の共通点は何ですか?」と質問したところ、「成功している経営者のほとんどが、『読書家』である」という答えが返ってきたそうです。著者は述べます。


「では、成功している経営者で、本を読まない人はいないのかというと、当然そういう人もいるそうです。しかし、本を読まない経営者で、10年、20年と継続的に結果を出す例は極めて稀なのだそうです。つまり、本を読まない経営者は、結果を出せたとしても『一発屋』で終わる可能性が高い。連戦連勝は難しいのだと」
まったく、その通りだと思います。100%同感ですね。

 

 さて、本書のタイトルは『読んだら忘れない読書術』です。この書名につられて本書を購入した人も多いのではないかと思いますが、第2章「『読んだら忘れない』精神科医の読書術3つの基本」には、10年たっても忘れない「記憶に残る読書術」というものが以下のように紹介されています。


「さまざまな脳科学研究を集約すると、最も効果的な記憶術として『最初のインプットから、7~10日以内に3~4回アウトプットする』ということが明らかになっています。それが受験勉強にも応用されているのです。
 人間の脳には、膨大な情報が流れ込んでいます。そして、それが毎日続きます。そうした情報を全て記憶すると、人間の脳はたちまちパンクしてしまいます。ですから人間の脳は、入力された情報のほとんどを忘れるように作られています。正確にいうと『重要な情報』以外は、全て忘れるようにできているのです。
 脳が『重要な情報』と判断する基準は2つです。『何度も利用される情報』と『心が動いた出来事』です」

 

 記憶は脳の中の「海馬」という部分に深く関わっています。
 人間の脳に流れ込んだ膨大な情報は、すべて海馬に仮保存されます。
 その海馬について、著者は以下のように述べています。


「海馬は、入力された情報を1~2週間だけ、仮保存します。
 そして、その『仮保存』期間中に、二度、三度と引き出された情報には、これは『重要な情報である』という付箋をつけるのです。『重要』という付箋のついた情報は、『記憶の金庫』ともいうべき、側頭葉に移動されます。一度、側頭葉に入ると、『忘れづらい記憶』となって長期保存されるのです。
 海馬が『短期間の記憶』を担い、側頭葉が『長期間の記憶』を担います。
 本を読み、そこで得られた情報を側頭葉の『記憶の金庫』に上手に移動できれば、『読んだら10年忘れない記憶』になるのです」

 

 また、著者は「脳内物質読書術」というものを提唱し、次のように述べます。


「『心が動いた出来事』とは、喜怒哀楽など激しい情動の変化がともなう出来事のこと。物凄く楽しかったはじめての海外旅行、胸が躍るはじめてのデート、何年も一緒に暮らしたペットが亡くなったときの悲しさ、交通事故にあったその瞬間。こうした激しい情動の変化がともなう出来事は、10年たっても、20年たっても忘れることはありません」


 さらに著者は次のように述べています。


「科学的なデータによって記憶力のアップが確認されている脳内物質には、アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン、エンドルフィン、オキシトシン、などがあります。アドレナリンとノルアドレナリンは、不安、恐怖にともなって分泌される脳内物質。事故や災害、近親者やペットの死などに直面したときに分泌されます」

 

 「電車でスマホをさわるのは最大の時間の無駄である」というのも共感しました。著者は、電車の中でスマホをさわり、メールやSNSのメッセージのチェックや返信、あるいはゲームをしている人々に対して次のように言い放ちます。


「私は電車の中でスマホを見るのは、最大の時間の無駄だと思います。なぜならば、1日10回もメールやメッセージをチェックする必要はないし、スマホでメッセージを返信するよりも、パソコンで返信したほうが、何倍も早いからです。スマホで15分かけて打った長文メールも、パソコンなら3分で打ち終わります」

 

 第3章「『読んだら忘れない』精神科医の読書術2つのキーワード」では、睡眠の力を借りて脳に焼きつける「熟読読書術」が興味深かったです。睡眠前の読書は、心と体をリラックスさせて、睡眠に入りやすくしてくれます。
 そして、睡眠には「頭の中を整理する」という役割があります。
 著者は、睡眠による「思考の整理」について次のように述べています。


「『次に目が覚めたときには、問題の解決方法を思いついている』と強く念じて眠りにつくと朝にひらめきが起きやすいそうです。それは『追想法』と呼ばれ、ノーベル物理学賞の湯川秀樹博士や発明王のトーマス・エジソンなども、この方法を活用していたといわれています」

 

 著者も自身の「追想法」について次のように述べています。


「私も、執筆する本の目次や構成が決まらない場合は、寝る前に『アイデアノート』や関連書籍などをパラパラとめくって、脳にインプットしてから寝るようにしています。そうすると不思議なことに、朝、目が覚めた瞬間に、神が舞い降りたように『理想的な本の構成』が頭の中にできあがっているのです。後は、忘れないうちに、すぐにそれを書き留めるだけです」

 

 第4章「『読んだら忘れない』精神科医の読書術 超実践編」では、自分にとって少し難しいくらいがいい「ギリギリ読書術」というものが紹介されています。以下の通りです。


「人間の脳は、『自分の能力よりも少し難しい課題』に取り組んでいるときに、最も活性化します。それは、『人間の能力よりも少し難しい課題』に取り組んでいるときには、ドーパミンという脳内物質が出ていて、ドーパミンが分泌されると集中力がアップし、記憶力も強化されるから。つまり、記憶に残りやすく、学びの効果を最大化できる、というわけです」

 

 第5章「『読んだら忘れない』精神科医の本の選択術」では、ネット書店のレコメンド機能やレビューを参考にする「ネット書店読書術」が紹介されています。以下の通りです。


「アマゾンのレコメンド機能では、アマゾンが保有する膨大な購入履歴、いわゆる『ビッグデータ』を利用し、さらにそのユーザーの購入履歴、『個人情報』もふまえて、そのユーザーにとって購入確率の高い商品を表示するプログラムが動いています。他社でも同様のプログラムが使われていますが、アマゾンのレコメンド機能の精度は、業界でも最高水準で他社には真似できないといわれています」

 

 レコメンド機能について、著者は次のようにも述べています。


「レコメンド機能は、自分にとって必要な本を世界最高水準の人工知能、電脳ブックコンシェルジュがお勧めしてくれているようなものだと考えることもできます。アマゾンがレコメンドする本は、実際に自分にとって必要な本が多いので、それを本選びに上手に活用するといいでしょう」

 

 そして、自分の直感を信じて、それに従う「直感読書術」も共感できました。
 著者は、「直感」の力について以下のように述べています。


「直感とは、人間の膨大な知識と経験というデータベースにもとづいて、無意識下で瞬間的に行われる判断のことです。人間の行動の99.9%はいちいち思考することなく、無意識下の『直感』によって行われているのです。ですから、しっかりとした『経験値』があるのならば、直感こそがその人のベストの判断軸だということがいえるのです。
 読書の場合でいえば、本をたくさん読めば読むほど、自分にとって『良い本』『役に立つ本』についてのデータベースが充実していくわけですから、直感で正しく判断できる確率が高まっていきます」


 本書は非常に売れ、読書関連本のベストセラー1位を独走しました。
 近年、これほど多くの人々に読まれた読書術の本といえば、本田直之氏の『レバレッジ・リーディング』以来ではないでしょうか。現役の精神科学医らしい知見をベースんした実践的な読書術である本書は、わたしにとっても大きな気づきを多く与えてくれました。
 そして、わたしも久々に読書術の本が書きたくなりました。