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読書狂の冒険は終わらない!』

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No.1046

 

 『読書狂の冒険は終わらない!』三上延&倉田英之著(集英社新書)を読みました。

 三上氏は1971年神奈川県生まれ。2011年に発表した古書ミステリー『ビブリア古書堂の事件手帖』が大ヒット。同作は2013年にTVドラマ化もされました。倉田氏は1968年岡山県生まれ。2001年『R.O.D-READ OR DIE-』のシリーズ構成・脚本を手がけ大ヒットしました。二人の「読書狂(ビブリオマニア)」の作家による対談本です。

 

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   本書の帯


 

 帯には、二人の代表作の女主人公のイラストが描かれ、「『ビブリア古書堂の事件手帖』(メディアワークス文庫)の三上延×『R.O.D』(スーパーダッシュ文庫)の倉田英之」「稀代の『読書狂』が繰り出す名作・傑作・奇本・珍本の数々!」「読まずに死ねない250冊!」と書かれています。

 

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   本書の帯の裏


 

 またカバー前そでには、以下のような内容紹介があります。


 「大ヒット古書ミステリー『ビブリア古書堂の事件帖』シリーズの作者・三上延は古書店勤務時代に本の査定までしていた筋金入りの書物通。一方、ビブリオアクション巨編『R.O.D』シリーズの倉田英之も「欲しい本はいま持ってない本、全部」と言い切るほどの本マニア。
 ベストセラー作家にして希代の『読書狂』の二人が『読まずにはいられない』名作・傑作・奇本・珍本の数々を、丁々発止で語り合うビブリオバトルが開幕! 博覧強記の二人が惜しみなく出し合う秘蔵の『読書ネタ』の数々は、それ自体が唯一無二の読書ガイドである」


 本書の「目次」は、以下のような構成になっています。


「まえがき」三上延
第1章 モダンホラーは最高だ!
第2章 乱歩と横溝と風太郎と
第3章 映画と本の怪しい関係
第4章 「挫折本」もまた楽し
第5章 珍本・奇本が大好物
第6章 ああ、思い出のトラウマ本
第7章 『ビブリア』『R.O.D』打ち明け話
第8章 古本・古雑誌は宝の山
第9章 本、愛あればこそ
第10章 本の未来を語ってみよう
「あとがき」倉田英之


 二人とも同じ「本」をテーマにしたラノベ作家で年齢も近く、さらには読書の趣味も似ていて対談は大いに盛り上がりました。わたしも本好きなので、二人の対話は大変楽しかったです。中でも、第1章「モダンホラーは最高だ!」では、わたしの好きな作家であるスティーヴン・キングが正面から取り上げられていて、狂喜しました。二人はキングについて、以下のように語り合っています。

 

三上 80年代はキングの第一次黄金期でした。


倉田 深町眞理子さん訳の本が出るようになって、日本にキングブームが起きた印象があります。僕も貪るように読んでましたねえ。アメリカのSF雑誌『スターログ』に、キングは今新作を書いているという情報が載るんです。『IT』なんて『早く読みたい!』と興奮して待っていたのに、実際に読めたのは十年後(笑)。
(『読書狂の冒険は終わらない!』P.18~19)


 最初、キングの作品は長編ばかりが刊行されていました。しかし、そのうち扶桑社ミステリー文庫に短編、中編が収められるようになります。二人は次のように語り合います。


倉田 ワープロに入力した名前を削除するとその人間がいなくなる話が表題作の『神々のワード・プロセッサ』とか、『ミスト』として映画化された『霧』が載っている『骸骨乗組員』とか。『霧』も中編にしては恐ろしく長い。僕が好きだったのは、『深夜勤務』所収の短編『やつらはときどき帰ってくる』。少年時代、兄を不良グループに殺された主人公が、教師になって母校に帰ってきたら、当時の不良が当時の姿のまま転校してくるという悪夢。あのころのキングって、書くもの全部名作だった・・・・・・。

 

三上 アルコール依存症に悩み始めた時期かもしれませんね。それでも70年代の終わりから80年代の後半ぐらいまでは、作品が一番充実してた気がする」(『読書狂の冒険は終わらない!』P.20)


 また、第2章「乱歩と横溝と風太郎と」も面白かったです。わたしの好きな江戸川乱歩、横溝正史、山田風太郎の三人が取り上げられているのですから、もうたまりません。この章には、とにかく知らなかった情報が満載で、たとえば横溝が『犬神家の一族』を出したときの乱歩のエピソードというのが非常に印象的でした。

 

 乱歩は横溝に対して、「君、こんど『犬神家の一族』というのを書くだろう。ぼく犬神だの蛇神だの大嫌いだ」と言ったというのです。横溝が「犬神というのは名字で、別にお化けとか出てくるわけじゃないですよ」と説明したところ、乱歩は「ぼく犬神だの蛇神だの大嫌いだ」ともう一度言ったそうです。本書では、乱歩と横溝の文体について、以下のように語り合われています。


倉田 横溝正史って、時々とても美しい文章を書きません? 

描写は残酷で人間関係はドロドロなのに、文体は案外ロマンチックな気がするんですけど。

 

三上 単にベタベタしているというのとは違いますよね。抒情性も感じるし、たぶん乱歩のほうがねっとりしてますよね」
(『読書狂の冒険は終わらない!』P.40)


 あと、乱歩は『鏡地獄』や『人間椅子』などに代表される奇妙な味の短編を多く残していますが、乱歩には幼児性があったとして、二人は以下のように語り合っています。


三上 誰かが言ってたのは、乱歩のそういう発想って幼児性が結構強く反映されてるんじゃないかということ、おもちゃ箱に似てるという指摘もあって、『パノラマ島奇談』なんてまさに、箱庭に中を自分の好きなもので埋め尽くす話ですよね。


倉田 確かに。『人間椅子』の椅子の中に入る行為って、子どもが考えることですよ。


三上 鏡の中にしても、どこか小さい空間に潜り込んだりするの、子どもは大好きですから。そういう幼児性を大人になっても持ち続けたんじゃないですか」(『読書狂の冒険は終わらない!』P.51)


 乱歩は編集者としてはものすごい腕を持っていました。横溝正史に声をかけたのも乱歩ですし、「宝石」の編集もやっていました。さらには、山田風太郎の才能を見つけたのも乱歩でした。ただし乱歩には美少年好みであり、池袋の暗がりで山田風太郎の両手を握って「君はいい、君はいい!」と言ったそうです。

 

 その山田風太郎は、若い頃は非社交的であった乱歩がトシを取ってから社交的になった理由について、その原因を乱歩の若ハゲに求めています。ハゲが恥ずかしくなくなった老齢になってから表に出るようになったなどと書いています。恩人のデリケートな問題に対して、ずいぶん容赦ないですね。


 第4章「『挫折本』もまた楽し」では、その長さゆえに読破できずに挫折した本の思い出が語られます。特にトールキンの『指輪物語』や『ホビットの冒険』が取り上げられるのですが、二人が交わすファンタジー論が興味深かったです。以下のような会話です。


三上 昔のファンタジー小説は、こことは違うもう1つ別の世界を作って読者に提示するというのが、目的の1つだったと思うんですよ。


倉田 昔は旅行しない人が多かったんで、小説は風景描写にすごい力を入れていたというのを聞いたことがあります。海を見ないまま死んじゃう人もいるんで、海というのはこういうものと、という描写が延々続いたりすることもあった。時代を経て、人々が旅行に行けるようになってきて、そういう描写がだんだん簡略化された結果、少しづつ物語の展開が早くなっていったんじゃないですか。たぶんそういうのを何回も繰り返して、エンターテインメントが今の形に落ち着いているんだろうなあと。
(『読書狂の冒険は終わらない!』P.96)


 といった感じで、本についての対話が延々と続くのですが、とにかく楽しい内容でした。本書にはブックガイドの機能もあり、たくさん面白そうな本が出てきたので、何冊かはアマゾンで注文しました。読書についての本を読んで、また新たな本との出合いがあるのは幸せなことです。わたしに幸福を与えてくれた三上氏、倉田氏の今後の活躍をお祈りいたします。