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輝いて生きる知恵』

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No.0991

 

 『輝いて生きる知恵』松原泰道(致知出版社)を再読しました。

 著者は、臨済宗の僧侶で、東京都港区の龍源寺の住職でした。著者は、1972年に『般若心経入門』を出版、これが記録的ベストセラーとなります。第1次仏教書ブームのきっかけを作ったとされています。

 

 さらに著者は、89年に仏教伝道文化賞、99年に禅文化賞を受賞しています。また、宗派を超えた仏教者の集いである「南無の会」の会長も務め、その著書は100冊を超えます。2009年、著者は肺炎のため101歳で亡くなりました。本書は、まさに死の直前に出版された、著者の遺書と言えます。全篇、含蓄のある言葉が並び、輝いて生きる知恵が紹介されています。


 特に、生まれたばかりの初孫を亡くしたくだりに強く心を奪われました。著者は病院から戻ってきた遺骸をそっと抱いたそうです。顔を見ると、自分によく似ていました。ショックで満足にお経が読めませんでした。しかし、後には次のように思い至ります。

 

 「私は本当の葬式ができる坊さんになりたいと思います。本当の葬式とは、お経が上手とか、葬式の運営がうまいとかではありません。私が孫を失って味わった悲しみ。これが原点です。親を亡くした子ども、子どもを亡くした親、生きている遺族がどんなに悲しいか。それがよくわかりました。だから、本当のお葬式というのは、死んだ人ではなく、生きて悩んでいる人たちの心の杖になることだと思いました。生きている人たちが真実の人生を求めていく力になることだと思いました。生きている人が成長すれば、それだけ亡くなった人が喜んでくれる、ということを孫から教わったのです。」

 

 日本の葬儀の現在のスタイルは、著者が属する臨済宗がつくったものだとされています。しかし、ゆきすぎた商業化をはじめ、現在の葬式はさまざまな問題を抱えています。「葬式仏教」とも揶揄される昨今、著者が言うように「本当の葬式」ができる僧侶の登場を心から期待します。

 

 仏教界の長老が100歳を超えて遺したメッセージを多くの僧侶に受けとめていただきたいと願うばかりです。

 

 なお、本書は『面白いぞ人間学』(致知出版社)でも取り上げています。