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ゼロからの挑戦』

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No.0895

 

 『新版・敬天愛人 ゼロからの挑戦』稲盛和夫著(PHPビジネス新書)を再読しました。

 「平成の経営の神様」と呼ばれる著者のビジネスマン人生を綴った「実践的マネジメント書」です。帯には、著者である稲盛氏の写真とともに「京セラ、KDDI、そしてJAL。努力と創意工夫のビジネス・ストーリーから導かれた成功の方程式。」と書かれています。

 

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   著者の写真が入った本書の帯

 

 また、カバー裏には以下のような内容紹介があります。


 「名経営者・稲盛和夫氏のビジネスマン人生を、京セラ創業から第二電電設立、直近のJAL再建に到るまで、数多のエピソードを交えて綴った、臨場感あふれるマネジメント書。成功する行動の仕方、考え方のヒントが豊富に織り込まれている」


 タイトルに「新版・敬天愛人」とあるように、本書は1997年5月に上梓された『敬天愛人』(PHP研究所)をベースとしています。2006年3月にはPHP文庫から文庫化されています。


 本書の目次構成は、以下のようになっています。


「はじめに」

 

第一部 「フィロソフィ」をベースにする


 ―稲盛和夫の経営―
 1.「フィロソフィ」が発展をもたらす
 2.「人の心」をベースにする経営
 3.原理原則を貫く経営
 4.お客様のニーズに応える経営
 5.未来へ挑戦する創造的経営
 6.アメーバ経営と時間当り採算制度

 

第二部 「フィロソフィ」の根底にあるもの1


 ―稲盛和夫の思想―
 1.人生の方程式
 2.心に思った通りの現象が現れる
 3.思いやる心
 4.「情けは人のためならず」

 

第三部 「フィロソフィ」の根底にあるもの2


 ―稲盛和夫の思想―
 1.動機善なりや、私心なかりしか
 2.世のため人のために尽くす
 3.心を高める、経営を伸ばす
 4.フィロソフィで会社は甦る――日本航空再建に携わって


 第一部「『フィロソフィ』をベースにする」の1「『フィロソフィ』が発展をもたらす」には、以下のように書かれています。


 「集団が機能し、成果を生み出すためには、そのめざすべき方向が明確であり、その方向に集団を構成する全員のベクトルを合わせなければならない。企業であれば、ベクトルを合わせるのは、経営理念や社是と呼ばれる規範である。そして、そのベースには、根幹となる考え方あるいは哲学が存在しなくてはならない。私は、創業間もない頃から、1日1日を懸命に生きる中で学んだものを折に触れまとめて、『京セラフィロソフィ』として、全社員で共有するように努めてきた。それは、人として生きるうえでの基本的な考え方、換言すれば『人間として正しいことを正しいままに追求する』ということをベースとしている」


 第一部の3「原理原則を貫く経営」には、次のように書かれています。


 「悩みに悩んだ末に、経営における判断は、世間で言う筋の通ったもの、つまり『原理原則』に基づいたものでなければならないことに気がついた。両親や先生から教わったプリミティブな考え方、つまり我々が一般に持っている倫理観、モラルに反するような判断では、決してうまくいくはずがないと考えたのである。
 そして、すべてのものごとを『原理原則』にまで立ち返って判断していこうと決心した。言い換えれば、『人間として正しいことなのか、悪しきことなのか』ということを基準にして判断し、『人間として正しいことを正しいままに貫いていこう』と考えたのである」


 第一部の6「アメーバ経営と時間当り採算制度」には、こう書かれています。


 「大きく肥大した組織になればなるほど、無駄が分かりにくくなる。京セラが成長を続け組織が拡大する中で、私は大きな組織を小さな組織(細胞)に分割して、無駄のない経営をしなければならないと思った。また、社員1人ひとりが生き生きと働くことのできる企業であるためには、個人の能力が最大限に発揮される組織が必要だと考えた。このような観点から私が考え出した経営手法が『アメーバ経営』である」


さらに、アメーバ経営について、著者は次のように述べています。


 「アメーバ経営にとって重要なことは、自分の組織がいくら利益を生み出したかということではなく、自分の組織は1時間当たりこれだけの付加価値を生み、運命共同体である会社に対して、これだけの貢献をしたと考えられるようになることなのである。だから会社に対して高い貢献をしたとしても、ボーナスや報奨金を与えるといったことはない。金品で人の心を繰ることができたとしても、一時的なものでしかない。アメーバ経営においては、素晴らしい実績を上げたとしても、各アメーバに精神的名誉が与えられるだけである」


 第二部「『フィロソフィ』の根底にあるもの1」の1「人生の方程式」の冒頭には、以下のように書かれています。


 「私は、京セラを創業して間もなく仕事や人生の成果を表す方程式を見いだした。それは、人生・仕事の結果=『考え方』×『熱意』×『能力』というものである。
 私は長年、この方程式に基づいて仕事をしてきた。またこの方程式でしか、自分の人生や京セラの発展を説明することはできない」


 著者は、「考え方」「熱意」「能力」の中で最も重要な要素は「考え方」であると喝破します。「考え方」とは、その人の魂から発するもので、生きる姿勢と言ってもいいでしょう。この姿勢が人間として正しいものかどうかが問われてくるというのです。それを踏まえた上で、著者は述べます。


 「世をすね、人を妬み、人をそねみ、まともな生きざまを否定するような、つまり否定的な生き方をするならば、先ほどの方程式において『考え方』がマイナス値となり、『能力』があればあるだけ、『熱意』が強ければ強いだけ、人生や仕事の結果において無残な結果を残してしまう。素晴らしい哲学を持つか持たないかで、人生はがらりとその様相を変えるのである」


 著者は、松下幸之助や本田宗一郎といった高等教育を受けていない名経営者の名前を挙げます。彼らは学校を出てすぐ丁稚奉公に行ったので、最高学府での学問の経験もなければ、専門知識も持っていません。生前の両者をよく知る著者は、次のように述べています。


 「人間はともすれば、有名大学を出、学問をすればするほど『能力』に依存し、『熱意』や、さらには『考え方』の重要性に対する認識が希薄となってしまう。そのせいか有名大学出身の創業者で成功した人は思いのほか少ない。
 才能があればあるだけ、謙虚に考え、素直に努力することができないのではないかと私は思う」


 第三部「『フィロソフィ』の根底にあるもの2」の1「動機善なりや、私心なかりしか」では、以下のように「京セラ哲学の根底にあるもの」が語られています。


 「私はすべての判断の基準を『人間として何が正しいか』ということに置いている。この『人間として』というところが大切である。京セラにとって何が良いかということでもなければ、ましてや私個人にとって何が良いかということでもない。一企業や一個人としての利害得失を超えて、人間として公明正大で天地に恥じることがないというような正しい行ないを貫いていこうということだ。これが京セラでは、私をはじめ全社員にとって最も根本的な行動規範となっている」


 第三部の3「心を高める、経営を伸ばす」では、著者が主宰する「盛和塾」の話題に触れつつ、「人材」について以下のように述べています。


 「もともと人材とは、群生するものである。たとえば、明治維新のときに活躍した長州藩士の大半は、松下村塾の塾生であった。また、同じく幕末から明治期に活躍した薩摩藩の人材も、加治屋町という小さなエリア出身者が多い。西郷隆盛、大久保利通、日露戦争でロシアのバルチック艦隊を撃破した東郷平八郎、また、満州奉天でロシア軍を敗走させた大山巌といった、錚々たる明治の元勲が、その狭い地域で群生するように輩出している」


 また、次のように経営者が持つべき「闘魂」について語ります。


 「経営者というものは、まずは従業員を路頭に迷わせないために、また顧客のため、株主のため、さらには社会のために、何としても売り上げを確保し、利益を稼ぎ出すことに努めなければならない。また、そのためには、経営者はすさまじいくらいの気概を持って経営に当たらなければならないのである。
 その気概とは、『闘魂』とも言い換えることができよう。『絶対に負けるものか』という格闘家の闘争心にも似た、激しい闘志が経営には必要不可欠である」


 さらに著者は、以下のように経営者として「あるべき姿」を語ります。


 「燃えるような闘魂があり、『何としても会社を良くしていきたい』という思いが強い経営者こそ、『人間として何が正しいのか』という哲学を学ぶことが大切である。そうすることで、ともすれば軌道を外れがちな自らを戒めつつ、強烈な願望と強い意志を持って仕事を続けていくことができる。また、そうすれば、必ず成功を収めることができるばかりか、その成功を長く持続することができるに違いない」


 「志を持って自分を高め続ける」ことを訴える著者は、次のように述べます。


 「『人生とはどのようなものなのか』『人生をいかに生きるべきか』ということを自分自身に問い、心を高めることに努める。またそのことを通じ、経営を伸ばしていく。たった1回しかない人生を、そのようにして、素晴らしい生き方と経営に努めることを通じて、従業員やその家族はもちろん、社会のため、世界のため、さらには地球のために貢献する。それは『一隅を照らす』ということであろう。
 たとえどんなに小さな企業でも構わない。その経営を通じ、世のため人のために尽くし、自分が生きている価値を、この地球上に足跡として残して死ぬべきだろうと、私は考えている。盛和塾で学ぶ、8000名にならんとする中小中堅企業の経営者たちが、今日も、そのような志を持って、研鑽を重ね、心を高めることで、自らの事業や人生を豊かなものとし、さらにはその従業員たちが幸福であることをめざして、日々懸命に活動を続けている」


 最後に、第三部の4「フィロソフィで会社は甦る―日本航空再建に携わって」では、著者は以下のように述べています。


 「2010年2月、私は80歳を前にして、日本政府の要請を受け、倒産した日本航空(JAL)の会長に就任した。
 これまで、京セラとKDDIという、2つの異なった業種の会社を創業し、両社合わせて売り上げ5兆円規模にまで成長発展させてきた経験はあった」


 著者は「三つの大義」によって、日本航空の再建を引き受けたそうです。

 1点目は、日本経済への影響。
 2点目は、JALに残された社員たちの雇用を守ること。
 3点目は、国民、すなわち利用者の方々への責任。


 「このような三つの大義があると考え、いわば義侠心のような思いが募り、身のほど知らずにも、会長としてJAL再建に全力を尽くそうと決意したのである」


 ちなみに、わが社は日本で唯一のミャンマー式寺院である「世界平和パゴダ」の支援活動を行っています。この活動を始めるに当り、わたしは世界平和パゴダ支援には以下の「三つの大義」があると思い、支援を決意しました。


 1、東アジアの平和拠点を守ること。
 2、戦没者の慰霊施設を守ること。
 3、上座部仏教の寺院を守ること。


 どんな事業や活動であれ、迷ったときには「これに大義はあるか」ということを考えるべきです。本書は、数多い稲盛和夫氏の著書の集大成であり、稲盛哲学のエッセンス的な本であると思いました。何度も読み返したい一冊です。