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野蛮人の読書術』

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No.0856

 

 『野蛮人の読書術』田村耕太郎著(飛鳥新社)を読みました。

 タイトルの「野蛮人」とは著者の自称だそうです。著者は前参議院議員(二期)で、現在は一般財団法人日本戦略支援機構代表理事を務めています。本書の帯には「世界のエリートは、なぜ大量の本を読みこなせるのか?」「ハーバード、エール、東京大学EMPほか、世界のトップ機関で研鑽を積んだ男が教える『いま、本当に使えるリベラルアーツ』の身につけかた」「ブックガイド30選を収録」と書かれています。

 

 本書の目次構成は、以下のようになっています。

 

「はじめに」

第1章 「リベラルアーツ」は読書で磨け    

    ・なぜアメリカの名門大学生は大量の課題図書を読みこなせるのか       

    ・世界のエリートに読書術を学べ    

    ・書評を書くことは最高の読書術である    

    ・「東京大学EMP」の底力と、そこで私が学んだ読書術

第2章 フロントランナーが教える読書術    

    1冊の中で「本当に必要な2割」を見つけよう

       ―池田信夫(経済評論家)       

    200冊×5年で脳内に「知の参照枠組」が構築できる

      ―村上憲郎(元グーグル日本法人名誉会長)     

    思考力を鍛えるには、「古典」が一番

       ―出口治明 (ライフネット生命保険株式会社 代表取締役会長兼CEO)     

    シリコンバレーの起業家はこんな本を読んでいる        

      ―石角友愛(元グーグル・シニアストラテジスト)     

    これが、コロンビア大学が誇る「コア・カリキュラム」        

      ―寺田悠馬(コロンビア大学卒業生)     

    「10000時間の法則」で、大抵のことはマスターできる        

      ―藤原和博(元杉並区立和田中学校校長)    

    「教養」ではなく、「実戦的な思考能力訓練」としての読書        

     ―横山禎徳(東京大学EMP企画・推進責任者)

第3章 野蛮人のブックガイド        

      ―「現代版リベラルアーツ」が身につく精選30冊

    1.先進課題

    2.先端科学・数学・哲学

    3.宗教・思想・文化・歴史

    4.経済・金融

    5.政治・外交・地域研究

    6.コミュニケーション能力

「おわりに」コミュニケーション能力を身につけるための読書

「付録」追加で読みたい20冊

 

 「はじめに」の冒頭で、著者は次のように述べています。

 

 「この本で私が伝えたいメッセージは、『読書こそが、激動の現代を"自由に生き抜く術"を身につけるための、最良にして最短の道である』というものだ。皆さんにはぜひこの術を身につけ、時代に先んじるリーダーになる準備をしていただきたい」

 

 「自由に生き抜く術」というのが本書のキーワードのようで、次に続きます。

 

 「グローバル化、高齢化、ハイパーコネクテッド化(全人類がソーシャルにつながっていくこと)、気候変動、テクノロジーの劇的革新という、人類史上最大の激動の時代である。仕事も他人との付き合い方も人生設計も根底から大きく揺さぶられる。これからの時代を『生き抜く術』を身につけているかどうかで、われわれ1人ひとりの命運は決まってくる。そしてこの『生き抜く術』を、最も低コストで手に入れる手法が読書だと私は思う」

 

 著者にとっての「自由に生き抜く術」は、いわゆる「リベラルアーツ」という言葉と同義語です。「リベラルアーツ」はよく「教養」と訳されますが、「教養とリベラルアーツは、実は似て非なるものである」と主張する著者は、次のように述べます。

 

 「『教養』という言葉には、どこか高尚で、浮き世離れした響きがある。『あの人は、教養はあるが生活力がない』『教養はあるが時代に乗り遅れている』などと、ネガティブな文脈で使われることも日本ではしばしばある。要するに、現実社会を生き抜くのにまったく役に立たないもの、という暗黙の前提があるのだ」

 

 しかし、「リベラルアーツ」ではこういうことはありえないとして、著者は「スティーブ・ジョブズ(アップル創業者)、ハーバート・ケレハー(サウスウェスト航空創業者)、ロバート・ノイス(インテル創業者)を筆頭に、アメリカの優れた大企業経営者には、ビジネススクール出身者よりリベラルアーツ・カレッジで学んだ人のほうがずっと多い。この例からもわかるように、『リベラルアーツ』は浮き世離れしたものであるどころか、むしろこの社会をリードする人間に不可欠な素養だとみなされているのだ」と述べています。

 

 そして、著者は以下のように「リベラルアーツ」の本質について述べます。 「そもそものリベラルアーツとは『自由7科』なるものから成っていた。文法学、論理学、修辞学、ならびに、幾何学、数論、天文学、音楽の7つの科目のことだ。前半の3科はコミュニケーションの技法であり、その実践である。リベラルアーツの半分はコミュニケーション能力なのだ。残りの4科は科学・数学(西洋音楽は数学の1分野)である」

 

 このあたりは、わたしも『あらゆる本が面白く読める方法』(三五館)で詳しく説明しました。

 では、現代版のリベラルアーツは何からなるべきか? 著者は、以下の6つの分野について、正しい知識とスキルを効率的に身につけることが、現代版の「生き抜く術」すなわちリベラルアーツであると説きます。

 

●先進課題

●先端科学・数学・哲学

●宗教・思想・文化・歴史

●経済・金融

●政治・外交・地域研究

●コミュニケーション能力

 

 「はじめに」の最後で、著者は「読書の醍醐味」について述べています。

 

 「他の動物と違い、人間だけがこれほどの進化をとげられた理由は、アイデアを融合させる力にある。過去のアイデアの蓄積に、現代のアイデアを掛け合わせることで、さらに優れたものを生み出すことができる。これは文字で知の蓄積を残せる人類だけがなせる業であり、これこそが読書の醍醐味である。多くの人が読書によって、多様な知識を身につけ、それを融合させることで人類をよりよい方向に導いていけると思う」

 

 著者の読書習慣を最終的に形づくってくれたのは、東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム(東大EMP)だそうです。東大EMPのめざすものは「価値観の多極化が進行するグローバル時代をリードするために不可欠な、幅広い教養と智慧を備えた全人格的能力の養成」だそうですが、半年間の学費は600万円だとか。東大EMPはとにかく課題図書をたくさん読まされるプログラムだそうで、著者も半年間で200冊を読んだといいます。

 

 そこで学んだ著者は、本書の第3章「野蛮人のブックガイド」および「おわりに」で「東大EMP」課題図書レベルの本を計50冊紹介します。著者いわく、この図書リストにこそ大いなる価値があるのであって、「課題図書リストを手に入れただけで、東大EMPに来た目的の半分は達成できた」とまで書いています。

 

 このへんの書き方は鼻につく読者もいることでしょうが、わたしも50冊のタイトルを見てみて、たしかにバランスの良い選書であるとは思いました。この読書館でも紹介した『ネット・バカ』『繁栄』も含まれていました。

 

 それらの名著を紹介しながら、その読みどころが次々に説かれていきます。たとえば、『進化しすぎた脳』池谷裕二著(講談社ブルーバックス)の項では、著者は次のように述べています。

 

 「皆さんは『直感』と『ひらめき』の違いがおかわりだろうか。『ひらめき』とは理由がわかる考え。別名、論理的推論と呼ばれる。この活動を司っているのは大脳皮質。一方、『直感』とは理由がわからない、考えてそうなるものではないもの。これを司っているのは脳内の線条体という部位である。プ口棋士は線条体を活用して将棋を指し、アマチュアは大脳皮質で指す」

 

 また、『人類の住む宇宙』岡村定矩著(日本評論社)も紹介されています。その項の最後では、著者は次のように書いています。

 

 「われわれは『星の子』であるということ。われわれの肉体を形成している元素は、字宙ができた時と星が生まれてまた滅びる時の原子核反応によって生まれた。それが宇宙に飛び散り、固まって冷えて、地球ができた。われわれは星の子、宇宙の子なのだ」

 

 この「星の子」「宇宙の子」というのは、わたしもよく使う表現です。

 さらには『悪の哲学~中国哲学の想像力』中島隆博著(筑摩選書)も紹介されており、著者は次のように述べています。

 

 「日本にも『おてんとうさまが見ている』『天に代わって成敗する』といった表現があるくらい、この天罰思想は東アジアに深く根付いている。実はこの天罰思想こそ、中国が統治のために作り出した思想の原点なのだと著者は言う。

 『天罰』という言葉の背景にあるのは、『天人相関』という中国の思想である。天と人を強く結びつけ、世の中に起こる災害や異変という『悪なるもの』を、人の不徳に対する『天罰』として捉える考え方だ。統治者が『天罰』を感じ取り、自らの行いを悔い改めて、もっとよい振る舞いをすれば、災害や異変はなくなる。逆に不徳を改めなければ、そのような災難は増えていく―」

 

 東大EMP仕込みの読書ガイドも興味深いですが、29名のノーベル賞受賞者を輩出している「世界を動かすランド研究所」の日本初の研究員だった著者の感想や意見には、やはり傾聴に値する部分が大きかったです。本書は大学院生レベルの読書術、あるいはエリートをめざす人のための読書入門と言えます。