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渋沢栄一 100の訓言』

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No.0830

 

 『渋沢栄一 100の訓言』澁澤健著(日経ビジネス文庫)を読みました。

 「『日本資本主義の父』が教える黄金の知恵」というサブタイトルがつけられ、表紙には渋沢栄一の肖像写真が使われています。また、カバー裏には以下のような内容紹介があります。

 

 「『満足は衰退の第一歩である』『「他人をも利すること」を考えよう』『緻密すぎる教育は、鉢植えの木のような人を増やす』。500社以上の会社を興した偉才の実業家・渋沢栄一。ドラッカーにも影響を与えた『日本資本主義の父』が残した黄金の知恵を、5代目子孫がいま鮮やかに蘇らせる」

 

 そう、本書の著者である渋澤健氏は渋澤永一の子孫なのです。

 

 本書の目次は、以下のようになっています。

 

「まえがき」
はじめに―なぜ、いま、渋沢栄一なのか」
第1章 心にも富を蓄えるための教え
第2章 行いを研ぎすますための教え
第3章 規律を学ぶための教え
第4章 運のつかみ方を知るための教え
第5章 教育の理想を説いた教え
第6章 家族と幸せになるための教え
第7章 人と人の関係を楽しくする教え
第8章 会社の本質を見抜く教え
第9章 社会を元気にする教え
第10章 世界とともに生きるための教え
第11章 お金儲けの哲学が光る教え
おわりに―未来に生きる渋沢栄一の「黄金の知恵」
「参考資料について」

 

 「はじめに」で、著者は次のように述べています。

 

 「21世紀に入って、経済をめぐる情勢はすさまじい勢いで変化しています。時代の寵児と呼ばれた若手企業家が、『金がすべてだ』『儲けて何が悪い』などと吠えながら自由自在に飛び回っていると思いきや、瞬く間に羽を容赦なくもぎ取られ、塀の中に落ちていきます」

 

 著者は「お金儲け」という言葉が、社会の各所で卑しく響き始めているとしながらも「悲しいかな、これが、21世紀日本の現状です」と嘆いた後で、述べます。

 

 「では、これは現在の日本だけの、独自の現象なのでしょうか。
 拝金主義的に新しい市場主義の時代を切り開こうとする勢力と、旧時代の秩序を依然として守ろうとする勢力の価値観が衝突しているから、こんなことが起こっているのでしょうか。答えは『NO』です。
 実は19世紀、明治の初期に日本の新しい時代を切り開こうとした勢力も、まったく同じように保守的な勢力とぶつかっていました。そういう意味で、歴史は繰り返しているのです。その新しい時代のパイオニアとして経済界に新たな秩序を打ち立てたのが、渋沢栄一だったのです」

 

 渋沢栄一は、多くの企業を創りました。現在も存続している企業も多いです。例えば、王子製紙、東京海上保険(現東京海上日動火災保険)、日本郵船、清水建設、東京電力、東京瓦斯(現東京ガス)、東京石川島造船所(現IHI)、帝国ホテル、東京製鐵、札幌麦酒会社(現サッポロビール)、帝国劇場(現東宝)、日本興業銀行(現みずほ銀行)、東京貯蓄銀行(現りそな銀行)、横浜正金銀行(現三菱東京UFJ銀行)、浅野セメント(現太平洋セメント)、川崎重工、日本鉄道会社・北越鉄道(現東日本旅客鉄道)、大阪紡績(現東洋紡)・・・など。


 まさに渋沢栄一こそは「日本資本主義の父」であると呼ぶにふさわしい巨人ですが、著者は次のように述べています。

 

 「これらのすべてを、渋沢栄一が1人で作ったわけではありません。たくさんの企業家や資本家とコラボレーションをしたり、スポンサーとして関与して創業した結果です。コラボレーションと言えば、渋沢栄一は、三菱財閥の総帥・岩崎弥太郎と2代目の岩崎弥之助、三井物産創立者の益田孝、古河財閥の古河市兵衛、浅野財閥の浅野総一郎らと深い関係がありました」

 

 いわゆる財界活動についても、渋沢栄一は先覚者でした。東京商法会議所(現東京商工会議所)の創立に関わっていますし、東京株式取引所の創立委員でもありました。ちなみに、現在の取引所は兜町の旧渋沢邸の敷地内に隣接しています。さらに、渋沢栄一は教育・慈善活動も熱心に行いました。
 1874年(明治7年)に東京養育院を創立し、そのトップとして実に56年、年数では第一国立銀行頭取よりも長く務めています。その他にも、一橋大学、東京女学館、日本女子大学、早稲田大学、二松学舎大学、聖路加国際病院、東京慈恵会医科大学付属病院、日本赤十字社、国際平和議会などの設立に尽力しました。

 

 著者によれば、渋沢栄一という人は「楽しむ心」と「遊び心」を本当に大切にしたそうです。著者にとって先祖である栄一の人生の本質は、「与えられた人生を、真に心から楽しむこと」だったとして、次のように述べています。

 

 「企業の創設も、民間外交も、『論語』の精神を経済活動に応用することも、どれも彼にとっては心をわくわくと躍らせる作業だったのです。危うい目に遭いながらも、それも含めたすべてを、まさに『ハートからエンジョイ』した人生でした」

 

 本書には100の渋沢栄一の言葉が収められています。中でも、わたしに強い影響を与えたものを紹介したいと思います。まずは、渋沢栄一をこよなくリスペクトしたピーター・ドラッカーが生涯にわたって口にした「強みを生かせ」にも通じる次の言葉から・・・・・。

 

長所はこれを発揮するに努力すれば、
短所は自然に消滅する。
(『渋沢栄一訓言集』一言集)

 

真の智者には、動中おのずから静があり、
真の仁者には、静中おのずから動がある。
(『渋沢栄一訓言集』処事と接物)

 

孝行は
親がさしてくれて
初めて子が出来るもので
子が孝するのでは無く、
親が子に孝をさせるのである。
(『論語と算盤』教育と情誼)

 

信には義が伴わねばならず、
義には信が伴わねばならない。
(『渋沢栄一訓言集』一言集)

 

志がいかに善良で忠恕の道に適っていても、
その所作がこれに伴わなければ、
世の信用を受けることができぬ訳である。
(『論語と算盤』常識と習慣)

 

礼儀ほど美しいものはない
(『渋沢栄一訓言集』一言集)

 

人に対して敬礼を欠いてはならない。
されどただ形式だけの敬礼は、
往々相手の感情を害し、
かえって礼せざるに劣るものである。
(『渋沢栄一訓言集』処事と接物)

 

信用は実に資本であって
商売繁栄の根底である。
(『渋沢栄一訓言集』実業と経済)

 

できるだけ多くの人に、
できるだけ多くの幸福を
与えるように行動するのが、
吾人の義務である。
(『渋沢栄一訓言集』一言集)

 

完全なる富は
完全なる信念から
生じなければならない。
(『渋沢栄一訓言集』座右銘と家訓)

 

 以上、全体の1割にあたる10の訓言を紹介しました。しかし、本書には訓言のみならず、その現代語訳、さらには著者による的確な解説も掲載されていますので、ぜひ実物をお読み下さい。

 

 著者は、近年広く知られるようになった「LOHAS(Lifestyles of Health and Sustainability)」という言葉を取り上げます。そして、「生活を、健康に永く保とう」というこの考え方は、道徳と経済を融合させる「論語と算盤」の考え方と大きく重なっていると指摘しています。

 

 「あとがき」で、著者は次のように述べています。

 

 「渋沢栄一の思想を一言でいえば、『個人が一人一人、しっかりと社会全体のことを考え、感じて、行動に移せば、健全に富を築くことができ、国や世界も発展して、永続する』というものです。この考えは、どんな時代のどんな政治・経済体制のもとでも、決して朽ちることのない最上の理想だと、私は確信しています」

 

 本書は、わたしが心からリスペクトする経済界の巨人・渋沢栄一の思想を非常にコンパクトに、わかりやすくまとめてくれています。1人でも多くの経営者やビジネスピープルに読んでほしい本です。