No.0806 芸術・芸能・映画 『東宝特撮総進撃』 洋泉社MOOK 別冊映画秘宝

2013.10.05

 『東宝特撮総進撃』(洋泉社)を紹介します。
 円谷英二特技監督が特撮技術を披露した昭和黄金時代を中心に東宝の特撮映画が全部で89作品も紹介された贅沢な一冊です。『円谷怪奇ドラマ大作戦』と同じく「洋泉社MOOK 別冊映画秘宝」ですが、本書の刊行は2009年10月23日になっています。表紙には、さまざまな怪獣たちやロボットの勇姿とともに「人気怪獣総出動! ご家族揃って楽しめる怪獣本の決定版!」と書かれています。

 本書の目次構成は、以下の通りです。

序文(みうらじゅん)
映画秘宝アンケートBEST! 1位~5位
1位:「フランケンシュタインの怪獣サンダ対ガイラ」大畑晃一/神武団四郎
2位:「マタンゴ」黒沢清/みうらじゅん
3位:「キングコング対ゴジラ」泉麻人/岸川靖
4位:「フランケンシュタイン対地底怪獣」みうらじゅん
5位:「怪獣総進撃」朱川湊人/高橋ヨシキ

●第1章:昭和ゴジラ
「ゴジラ」切通理作
「ゴジラの逆襲」木原浩勝
「モスラ対ゴジラ」とり・みき/島本高雄
「三大怪獣 地球最大の決戦」金子修介
「怪獣大戦争」中村哲
「ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘」島本高雄
「怪獣島の決戦 ゴジラの息子」中野貴雄
「ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃」河崎実
「地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン」増子直純
「ゴジラ対メガロ」ギンティ小林
「ゴジラ対メカゴジラ」増子直純
「メカゴジラの逆襲」鷲巣義明
インタビュー(原口智生)

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●第2章:平成ゴジラ
「ゴジラ」(84年)編集部(田野辺尚人)
「ゴジラ対ビオランテ」中沢健
「ゴジラ対キングギドラ」尾崎一男
「ゴジラ対モスラ」青井邦夫
「ゴジラ対メカゴジラ」田口清隆
「ゴジラ対スペースゴジラ」田口清隆
「ゴジラ対デストロイア」岡本英郎
「ゴジラ2000ミレニアム」岡本英郎
「ゴジラ×メガギラス G消滅作戦」山田誠二
「ゴジラ×メカゴジラ」山田誠二
「ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS」尾崎一男
「ゴジラ FINAL WARS」編集部(田野辺尚人)
海外ポスターギャラリー

●第3章:東宝怪獣
「獣人雪男」佐野史郎
「空の大怪獣ラドン」篠崎誠/アレックス・コックス
「大怪獣バラン」品田冬樹
「宇宙大怪獣ドゴラ」とり・みき
「キングコングの逆襲」神武団四郎
「ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦!南海の大怪獣」中野貴雄
「モスラ」「モスラ2」「モスラ3」友井健人
インタビュー(林家しん平)

●第4章:パニック映画
「日本沈没」福井晴敏
「ノストラダムスの大予言」福井晴敏
「東京湾炎上」馬飼野元宏
「自身列島」馬飼野元宏

●第5章:変身人間
「透明人間」鷲巣義明
「美女と液体人間」柳下毅一郎
「電送人間」鷲巣義明
「ガス人間第1号」菊地秀行
東宝怪獣俳優軍(みうらじゅん)
映画秘宝アンケートBEST! 6位~10位
6位:「ゴジラ対へドラ」鷲巣義明
7位:「モスラ」切通理作
8位:「地球防衛軍」土屋嘉男/岸川靖
9位:「ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」編集部(田野辺尚人)
10位:「海底軍艦」岸川靖/アレックス・コックス
円谷英二と東宝特撮映画前史(浦山珠夫)
東宝特撮における俳優の演技の変化(佐野史郎)
インタビュー(中島春雄)

●第6章:戦争映画
「殉愛」磯田勉
「極楽島物語」浦山珠夫
「潜水艦イー57降伏せず」青井邦夫
「ハワイ・ミッドウエイ大海空戦 太平洋の嵐」手塚昌明/大久保義信
「太平洋の翼」大久保義信
「青島要塞爆撃命令」川又千秋
「太平洋奇跡の作戦 キスカ」岸川靖
「ゼロ・ファイター 大空戦」大久保義信
「連合艦隊司令長官 山本五十六」大久保義信
「日本海大海戦」岸川靖
「激動の昭和史 沖縄決戦」磯田勉
「連合艦隊」川又千秋
「零戦燃ゆ」手塚昌明
インタビュー(川北紘一)
東宝特撮の風景1(浦山珠夫)

●第7章:未来戦争映画
「宇宙大戦争」山本弘
「世界大戦争」山本弘
「緯度0大作戦」岸川靖
「惑星大戦争」Bazil
インタビュー(井上誠)
東宝特撮の風景2(浦山珠夫)

●第8章:SF・ファンタジー/活劇
「乱菊物語」「白夫人の妖恋」浦山珠夫
「孫悟空」「日本誕生」浦山珠夫
「大阪城物語」近藤ゆたか
「紅の海」鈴木啓之
「ゲンと不動明王」神武団四郎
「妖星ゴラス」山本弘
「紅の空」鈴木啓之
「大盗賊」馬飼野元宏
「士魂魔道 大龍巻」石熊勝己
「大冒険」河崎実
「奇巖城の冒険」石熊勝己
「クレージーの大爆発」鈴木啓之
「コント55号 宇宙大冒険」鈴木啓之
「エスパイ」中野貴雄
「HOUSE」大林千茉萸
「幻の湖」轟夕起夫
「さよならジュピター」とり・みき
「竹取物語」モルモット吉田
「ヤマトタケル」山田誠二
特撮を謳わない作品と配給作品(岸川靖)
索引

    本書の表紙も素晴らしい!

 本書は、とにかく執筆陣の顔ぶれの豪華さに圧倒されます。土屋嘉男、黒沢清、佐野史郎、菊地秀行、朱川湊人、山本弘、アレックス・コックス、金子修介、柳下毅一郎、切通理作、泉麻人・・・・・さまざまな人々が東宝特撮映画に対して極私的な思い入れやマニアックなエピソードを述べます。

 わたしは昔から東宝特撮映画が大好物だったので、多くの作品を鑑賞していますが、もちろん未見の作品も多く、ムラムラとしてしまいます。今ではDVD化されている映画も多く、本書はDVD鑑賞のお供に最適でしょう。

 似た内容の本に『東宝特撮映画大全集』東宝株式会社著(ヴィレッジブックス)という大型本があります。こちらは東宝特撮映画の全作品を網羅しており、資料性は抜群ですが、価格が5040円と高めなのと、あまりにも資料的に完璧なため「読んで楽しむ」本というよりも「研究する」本といった感じです。何よりも、本書『東宝特撮総進撃』は企画が素晴らしいですね。最初は当然、「ゴジラ」から始まると思ってページを開くと、いきなり「フランケンシュタインの怪獣サンダ対ガイラ」が登場するのですから、たまりません!
 しかも、このカルト映画が人気アンケート1位で、2位がこれまたカルト映画の「マタンゴ」というのですから、もう何をかいわんやです。すごすぎる!

    東宝特撮怪奇映画のDVD

 わたしは、ゴジラが出てくる怪獣映画も好きですが、「透明人間」「美女と液体人間」「電送人間」「ガス人間第1号」「マタンゴ」と続く、東宝特撮怪奇映画を高く評価しています。そういえば、岸田森の「吸血」三部作も作られましたね。

 東宝の怪奇映画は、ユニヴァーサルやハマー・プロにも負けない世界レベルのホラー・ムービーだと確信します。フランケンシュタインのモンスターや吸血鬼ドラキュラに、液体人間やガス人間も負けていません。なんといっても、われらがゴジラこそは「キング・オブ・モンスター」だと世界中が認めています。

   わが東宝特撮DVDコレクション

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