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親を切ると書いてなぜ「親切」』

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No.0777

 

 『親を切ると書いてなぜ「親切」』北嶋廣敏著(リイド文庫)を読みました。

 ふだんこの手の雑学系文庫本はあまり読まないのですが、つい購入しました。タイトルに惹かれたからです。本書には「二字漢字の謎を解く」というサブタイトルがついています。

 

 カバー裏には、「知っていそうで知らなかった!」と大書され、続いて以下のような内容紹介があります。

 

 「普段、日常的に使っている二字漢字。
 でも、あらためて見直すと『この意味を表すのに、なぜこんな漢字が使われているわけ?』と驚かされます。本書はそうした不思議な二字漢字の謎を解明した初めての書き下ろし文庫本です」

 

 また、帯には「究極の漢字トリビア!!」として以下のコピーが続きます。

 

 「転嫁」はなぜ「嫁が転ぶ」と書く?
 「腕白」な子供は腕が白い?
 「青春」って、なぜ「青い春」なのか?

 

 この3つの問いに続いて、「・・・・・二字漢字はまさにトンデモだらけ!」とありますが、たしかにどれも不思議ですね。

 

 この3つの二字漢字について、本書では以下のような解説があります。まずは、責任を他人になすりつけることをなぜ「転嫁」というのか。この理由について、本書にはこう書かれています。

 

 「『嫁』という字は『女』と『家』から成り、その字源については、『家』は祖先をまつる廟のことで、『嫁』とはその廟に仕える女性をいうとする説がある。『嫁』は『か』と音読みし、それが同音の『買(か)』と通じ、よめ、とつぐという意味のほかに、『買』がもっている、売る、あきなうなどの意味をもつようになり、さらに売りつける、なすりつけるなどの意味をもつに至る。『転嫁』がなすりつけることを意味するのは、『嫁』にそうした意味があるからである」

 

 次に、いたずらな子をなぜ「腕白」というのか。本書には、次のように書かれています。

 

 「『わんぱく』は江戸時代に生まれた言葉で、その語源については二つの説がある。一つは亭主関白などという『関白』が変化したものという説。すなわちワンマン(権力者)を意味する『関白』がなまって『わんぱく』になったという。もう一つは漢語の『枉惑(おうわく)』からきているという説。枉惑は不正、道にはずれることなどを意味する。それがなまって『わんぱく』になったという」

 

 そして「青春」ですが、なぜ「青い春」なのでしょうか。本書では、次のように説明されています。

 

 「『青春』という言葉は、中国古代の思想である陰陽五行説からきている。陰陽五行説では、春・夏・土用・秋・冬の五つの季節に、青・赤・黄・白・黒の五つの色が対応している。すなわち『春』は『青』色であり、だから『青春』である。夏を表す『朱夏』(赤→朱)、秋を表す『白秋』、冬を表す『玄冬』(黒→玄)という言葉もそこからきている」

 

 さらに、世の中にはよくよく考えると、「なぜそう書くのか」「なぜそう読むのか」「どうしてそういう意味になるのか」といった疑問をもたせる不思議な言葉がけっこうあることに気づきます。
 たとえば、「帰省」という言葉です。故郷に帰ることでは「帰郷」と同じですが、「帰省」には「省みる」という行為が含まれています。
 本書には、「故郷に帰って、父母を省みる。親の安否をうかがう。それが『帰省』の本来の意味である。単に故郷に帰るだけでは『帰省』とはいえないのである」と書かれています。

 

 「弱冠」という言葉も、謎を感じる言葉です。これは古代中国における慣習に由来するそうで、次のように説明されています。

 

 「その昔、中国では20歳を『弱』といい、元服して冠をつけた。『弱冠』という言葉はここからでたもので、本来は20歳を指した言葉であった。だから『弱冠18歳』とか『弱冠30歳』といった言い方は、弱冠の本来の意味からいえば、おかしいということになる」

 

 「消息」と言う言葉も気になりますが、次のように説明されています。

 

 「『息』には生きている、生きながらえているという意味がある。消息の『息』はその意味で、『消』は消える(=死ぬ)ことを意味する。『消息』とはすなわち死と生=『生き死に』(生きることと死ぬこと)のことで、そこから移り変わり、変化、人の動静・様子などの意味が生まれ、また様子を人に知らせるということから手紙(たより)を意味するようになったと考えられている」

 

 そして、本書のタイトルにもなっている「親切」です。なぜ、他人に優しくすることを「親を切る」と書くのか。その理由ですが、以下のように説明されています。

 

 「じつは親切の『切』は、切るという意味ではない。『切に望む』といった言い方をする。その『切に』は、どうしてもと強く思う様子を表わした副詞で、心から、心底からという意味である。親切の『切』もそれと同じような意味であり、親しさ、思いやりの程度が激しいことを表わしている」

 

 「無心」という言葉も気になります。あつかましく金品をねだることがどうして「無心」なのでしょうか。本書では、「『無心』は、心なきこと、心を用いないこと、相手を思いやらないことを意味する。それらの意味が転じて、金品をねだることを意味するようになったと思われる」と解説しています。なるほど、非常に納得できますね。

 

 最後に、わたしとしては「油断」という言葉の意味を知ることができて良かったです。いったい、どうして「油断」というのでしょうか。次の通りです。

 

 「仏教の経典『涅槃経』に、こんな話が載っている。ある王が家臣に油の入った鉢をもたせ、『1滴でもこぼしたら命を断つ』と申しつけ、その後方に刀を抜いた男を置いて監視させた。家臣は注意深くその鉢をもち、1滴もこぼさなかった。一説に、この説話から『油断』という言葉ができたという」

 

 いずれも目からウロコが落ちるような内容でした。他にも多くの二字漢字が取り上げられており、その数じつに220! さらには、巻末に「二字漢字力」テストも付録として掲載されています。「不思議な二字漢字」を網羅・解説した本書はさながら本邦初の『二字漢字熟語辞典』といった趣がありますが、読み物としても非常に面白かったです。