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トムは真夜中の庭で』

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No.0779

 

 夏休みといえば、わたしの思い出は常に読書の記憶と結びついています。小学校から大学まで、長い夏休みの間にさまざまな本を読みあさりました。

 

 旅行にも出かけましたが、必ず何冊かの本を持ってゆきました。旅先で本を読む楽しみは、また格別です。わたしにとっての夏の訪れは、「さあ、面白い本がたくさん読めるぞ!」というワクワク感につながっています。

 

 そんな夏に読んだ多くの本の中で、とくに忘れられないのが、今回ご紹介する『トムは真夜中の庭で』 フィリパ・ピアス著 高杉一郎訳(岩波少年文庫)を紹介します。もう数え切れないくらい読み返した本です。最初に読んだのは小学5年生の時でした。

 

 物語の主人公は、知り合いの家にあずけられた孤独な少年トムです。彼は、真夜中に古時計が13回時を打つのを聞きます。そして、昼間はなかったはずの庭園に誘い出され、ハティという名前のヴィクトリア時代の少女と知り合います。いわゆるタイムファンタジーの古典ですが、「時間とは何か」あるいは「思い出とは何か」といった大事なテーマが自然に心に浮かんできます。

 

 かつて、わたしは高齢者の方が自らの人生を振り返るための『思い出ノート』(現代書林)というものを刊行したのですが、人間にとって本当の宝物とは「思い出」に他なりません。『トムは真夜中の庭で』を読めば、「思い出」についての考え方が良い意味で少し変わるのではないでしょうか。
また、アルツハイマー症候群の方を介護されているような方にも一読をおすすめします。本書は児童文学の傑作ですが、大人が読むべき本でもあるのです。

 

 とても興味深いストーリーですが、おそらく結末は容易に想像がつくと思います。この物語に似た本や映画もたくさん存在します。おそらくは、本書が同タイプのあらゆるファンタジーの原型になっているのでしょう。

 

 『秘密の花園』みたいに庭園の魅力を描き、『モモ』みたいに時間の不思議を描いている。そして、あらゆる世代の少年・少女が抱く「憧れ」や「希望」を美しく描いた物語でもあります。大人が読めば、たまらなくなつかしい気持ちになるはずです。夏休みが終わる前に、ぜひ親子でお読み下さい。