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奇跡を呼ぶ100万回の祈り』

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No.0702

 

 村上和雄シリーズの8冊目は、 『奇跡を呼ぶ100万回の祈り』 (ソフトバンク クリエイティブ)です。帯には「村上氏の考えは宗教と科学の垣根を越え、すべての読者を調和の世界へと誘うであろう」というダライ・ラマ14世の推薦の言葉が紹介されています。また、「『祈る力』はすべてを変える!」「国難にあえぐ日本への遺伝子工学の権威による愛と希望のメッセージ」とも書かれています。


 本書の構成は、以下のようになっています。


プロローグ:大震災が私たちに提示したもの
第1章:今、「祈り」が必要な理由
第2章:「サムシング・グレート」と祈りの民、日本人
第3章:「アホ」な祈りが日本の力になる
第4章:「祈り」のある行動が奇跡を起こす
第5章:100万回の祈りを捧げよ
エピローグ:奇跡の復興のために


 本書は、2011年7月6日に刊行されています。
 つまり、あの3・11から3ヵ月ちょっとしか経っていません。当然ながら、本書の内容も東日本大震災を意識したものとなっています。冒頭には、「2011年3月11日に日本を襲った地震により、被災された方々に心よりお見舞いを申し上げます。―村上和雄」と書かれています。


 大震災の前年、2010年の秋、著者は脳梗塞を起こし、病床に伏していたそうです。自ら「陽気暮らし」を実践してきた著者が病気になるとは意外ですが、やはり人生というものは一筋縄ではいかないものなのでしょう。著者は述べます。


 「50年にも及ぶ生命科学の研究の経験から、『命』の尊さを、私はそれまでも知っているつもりではありました。多くの著作で、講演で、そのことを語ってきました。しかし、自分が病を得て、私は初めて気づいたのです。それは、命の尊さを『頭で理解していただけだった』ということに。
 つまりそれは、祈りというものをいろんな角度から見ているようでいて、目に見えるものしか『見ていなかった』ということと同義だったのです」


 著者は、日本に未曾有の大震災が起こった意味を考え、次のように述べます。


 「日本人は、本来目に見えないことを大切にして、何かを行動するときには森羅万象を慮る心を持って生きてきました。自然の恵みを育む太陽を『おてんとうさま』と敬い、おてんとうさまに恥ずかしくないように、と生き方を律して、何かの恩恵を受けても『おかげさま』と感謝する。そうした、見えないものへの畏敬の念を、特別な祈りの中だけでなく、日常の中で持ち続けてきた民族だったはずです。その日本人が、目に見える経済効果やシステム、技術といったことばかりに重きを置いた営みを送ってきた中に起こった今回の大震災。これは、そうした日本を憂う、大自然からの何らかのメッセージだと思えてならないのです」


 東日本大震災では、「祈り」という言葉がよく使われました。ツイッターから生まれた「PRAY FOR JAPAN」もキーワードになりましたが、「PRAY」とは「祈る」という意味です。著者は、人は「祈ることしかできない」というときが必ずあるといいます。そして、人は無力だから祈るのではなく、祈りには思いもよらない力があるから祈るのだといます。人間はそうした力を知っていて、本当に苦しいときに、まさに祈りの遺伝子のスイッチがパチンと入るようにできているというのです。

人は、どういうときに祈るでしょうか。まず、「命が助かりますように」とか「病気が治りますように」といった祈りが思い浮かびます。
アメリカの病院で、大変興味深い実験が行なわれたそうです。心臓病患者393人に対する実験で、「他人に祈られた患者」は、そうでない患者に比較して、人工呼吸器、抗生物質、透析の使用率が少ないことが判明したというのです。しかも患者から遠く離れた場所からの祈りも同様の効果があり、患者本人は自分が祈られていることは知らなかったケースも多かったそうです。


 この不思議な現象を、いったいどう考えればよいのか。著者は、1人の科学者として、こう思ったそうです。


 「理由は分からない。しかし、実際に効果があるのは、それは、人知の及ばない力による作用なのではないか。何よりも効果があるのだから、理由を解明できなくとも、祈ることの大切さに変わりはないのでではないか」と。


 そもそも科学と祈り(宗教)は、相反するものではありません。また、かつては別個のものではなかったとして、著者は次のように述べます。


 「科学のルーツをたどっていくと、神の存在を研究する神学にたどり着きます。
 例えば地動説を唱えたガリレオ・ガリレイやコペルニクスも、エンドウ豆の研究から遺伝の法則を発見したメンデルも、みんな敬虔なクリスチャンだったことはよく知られています。
 つまり、もともと人智を超えた偉大な存在を探究することを前提として出発した神学や科学が、近代になって『客観的に証明できないものが神と同じ次元で扱われるのはおかしい』とされ、別個のものに分けられてしまったのです」


 著者によれば、科学の世界には「ナイト・サイエンス(夜の科学)」と呼ばれる「偶然の幸運」がたくさんあるそうです。著者自身も、ある人物との偶然の出会いによって高血圧の黒幕である酵素「レニン」を発見しました。ノーベル賞を受賞した田中耕一氏の、タンパク室を気化、検出することに成功するという世界初の業績も「実験中に間違った溶液を混ぜた失敗物を捨てるのが惜しいと思った」ことが契機となったのは有名です。著者は、ノーベル賞を受賞するような人々は、多かれ少なかれ「偶然の幸運」を経験していると言います。


 科学者たちは、偶然による思いがけない神からの贈り物のような成果のことを「セレンディピティ」と呼びます。著者は、この「セレンディピティ」、つまり「偶然の幸運」こそは日本人の民族性に通じるとして、次のように述べます。


 「例えば、『ありがたい』『おかげさま』という言葉を心から使うとき、私たちは特定の誰かというよりも、自分を見守ってくれている、目に見えないが努力をしている人をちゃんと評価してくれる幸運に対して、謙虚に感謝している感覚がそこにあるはずです。同様に、『ご縁があった』とか『ご利益があった』という表現や感覚もまた、人知の及ばぬ何かからもたらされたことである、というニュアンスを込めて使われていると思います」


 これまでの著書と同様に、著者は「楽天的に生きる」ことを良しとします。楽天的に生きることこそが、祈りの力を発揮するコツであると言うのです。祈り方が上手でない人には、実は「今」を生きていないという共通点があるとして、次のように述べています。


 「現在、大変な苦難の中にいる方も多いのは承知しています。
 しかし、だからこそ祈りがあるということを忘れないでいただきたければ、『今』を生きるということも大切にしてもらいたいと思うのです。
 なぜならば、楽天には天命を楽しむという意味があるのですから」


 わたしは、これを読んだとき、軽い衝撃をおぼえました。「楽天」には「天命を楽しむ」という意味がある!!

 わたしはもうすぐ50歳になります。いわゆる「知命」と呼ばれる年齢ですが、この言葉は『論語』に由来します。孔子は「50にして天命を知る」と言いました。しかし、「楽天」という言葉の意味を知ったからには、50歳になって天命を知り、さらにそれを大いにエンジョイしたいと思います。そう考えたら、なんだか非常に気が楽になりました。


 本書の最終章である第5章「100万回の祈りを捧げよ」には、「遺伝子スイッチのON/OFFに関わること」という項目があります。「祈り」の他にも遺伝子のスイッチのON/OFFに関わる要因はたくさんあり、それらを大別すると次の3つに分けることができるそうです。


 1.物理的要因(熱、圧力、張力、訓練、運動など)
 2.食物と科学的要因(アルコール、喫煙、環境ホルモンなど)
 3.精神的要因(ショック、興奮、感動、愛情、喜び、恨み、信条、祈りなど)


 次に、アメリカの心理学者であるA・H・マズローは「人間の可能性を妨げる6つの要因」として、次の6項目をあげました。著者によれば、これらは遺伝子の目覚めを妨げる要因と考えていいそうです。


 1.いたずらに安定を求める気持ち
 2.ツラいことを避けようとする態度
 3.現状維持の気持ち
 4.勇気の欠如
 5.本能的欲求の制御
 6.成長への意欲の欠如


 著者は、これらの要因を考えたうえで、遺伝子のスイッチをONにするために、毎日の暮らしの中で次の6つのことを意識するように読者に呼びかけます。


 1.どんなときも明るく前向きに考える
 2.思い切って今の環境を変えてみる
 3.人との出会い、機縁を大切にする
 4.感動する
 5.感謝する
 6.世のため人のためを考えて生きる


 遺伝子のスイッチをONにすることが上手な人とは、どういう人か。 

 著者は、一言でいうと「あきらめない人」であるといいます。能力や才能を存分に発揮できるかできないかは、遺伝子のスイッチのON/OFFと密接に関係しており、「あきらめない人」こそは自分が必要としている能力を高めることができる人だというのです。


 そして、本書の最後で、著者は「祈りの持つイメージは『静』ですが、実は『行動そのものの中にも祈りはある』。すなわち、私たち1人ひとりが『祈り、行動する民』にならなければならないのだということです」と述べています。


 本書は、東日本大震災という未曾有の大災害を体験した日本への世界的科学者からの魂のメッセージです。すべての日本人に「祈りの書」である本書を読んでほしいと思います。