No.0679 人生・仕事 『英雄の哲学』 イチロー・矢沢永吉著(ぴあ)

2013.03.01

 『イチロー×矢沢永吉 英雄の哲学』(ぴあ)を再読しました。
 帯には「人生、仕事、夢・・・オンリーワンふたりの奇跡の対談が実現!『イチローさん、若い頃のヤザワに似てますよ。筋、通してるしね』」、そして「BSデジタル放送5局、共同特別番組の単行本化」と書かれています。

 以下は本書の構成ですが、そのままメッセージになっていますね。

哲学1:人は、現役で在り続けなければならない
哲学2:人は、子どものころの気持ちを忘れてはならない
哲学3:人は、最高のレベルを求めなければならない
哲学4:人は、未知の扉を開けなくてはならない
哲学5:人は、自己と向き合わなくてはならない
哲学6:人は、変化し続けなくてはならない

 たしかに帯のコピーのように「奇跡の対談」と呼んでもおかしくない豪華な組み合わせです。本書の冒頭で、ライターの長谷川誠氏が次のように書いています。

 「2人が初めて出会ったのは2006年1月某日、午後2時のことだ。場所は都内一等地にある矢沢が所有する瀟洒なビルである。この建物の中にはレコーディング・スタジオ、撮影スタジオなど、彼が活動を展開していくための施設が完備されている。矢沢自身が全体の構造から設備の細部にまでこだわって、完成させた建物である。つまり矢沢の日本での仕事場であり、隠れ家ということになる。その矢沢の”城”にイチローが招かれたのだ」
 矢沢氏の著書『アー・ユー・ハッピー?』の書評で紹介したように、かつて矢沢永吉はオーストラリアに自分の”城”を作ろうとして、30億円の横領被害に遭いました。その後、借金を返済した彼は、新たに東京の一等地に”城”を築いたわけです。長谷川氏は、さらに2人のヒーローについて、こう書きます。

 「イチローと矢沢。両者は野球界と音楽界というまったく異なるフィールドで戦い続けてきた人間である。年齢も32歳と56歳とかなり離れている。2人の間にはまったくと言っていいほど、接点がない。ただし接点はなくても、共通点はたくさんある。それぞれの世界で頂点を極めたということ、そして唯一無二の存在であるということだ」

 50歳までバリバリの現役プレイヤーでいたいと願うイチローは、当時56歳ながらも第一線を走り続ける矢沢の体から発するオーラやエネルギーの大きさに感心します。そして、「その人が持つエネルギーみたいなものは、初めて会ったときの第一印象で、特に強く感じることなんですね。でも、何回か会うことを重ねていくと、そういうものってやっぱり見えなくなってきたりもするものなんです。だから、初めにぽーんって会ったその瞬間って、その人のオーラだとか、エネルギーだとかを一番感じるんです」

 また、イチローは次のように矢沢に語りかけます。

 「人生の選択として、楽な道と苦しい道があったとしたら、矢沢さんはあえて苦しい道を選んで、自分を追い込んでこられた。その姿勢があったからこそ、50歳を越えたいまもなお、第一線で御活躍されている。そう、感じました。そして、その今日までの道のりが、僕には信じられないくらいすごい道のりだったんだなと思うんです」

 一方の矢沢は、若いイチローに対して優しく語りかけます。

 「僕ね、こう思うんですよ。欲求・・・・・つまりなにかもっと欲しいんだとか、もっと自分はハッピーになりたいんだっていう人。そういう人は上から言うとか言わないとか、そういうことすらないと思う」

 「自分はもっと楽しもうとか、自分はやるべきことがあるとか。自分には、今年はどういうテーマがあるのかなとか。そういう自分に対して新たなテーマがある人は、上から言うだの、言わないだの、歳の差があるだの、ないだのってことすらもないでしょう」

 矢沢は「イチローさん、若い頃のヤザワに似てますよ。筋、通してるしね」と言いますが、たしかに2人の雰囲気は似ているかもしれません。表紙カバーには、2人のヒーローが並んだ写真が使われています。こうして見ると、2人の体格もほぼ同じですが、ともにスタイルが良くて顔が小さい!

 本書は、それぞれの道を求める2人の求道者の爽やかな対談本です。

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