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無縁社会を生きる』

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No.0686

 

 昨夜、最大手の冠婚葬祭互助会の社長さんが北九州に来られました。わたしたちは、久しぶりに小倉の夜の街で痛飲しました。遊びというより仕事の延長の酒で、業界の未来について熱く語り合いました。業界の未来といえば、『無縁社会を生きる』藤島安之著(幻冬舎メディアコンサルティング)が最高のテキストとして思い浮かびます。

 

 この本だけはどうしても紹介しなければならない、また紹介したいと思っていました。「無縁社会」と呼ばれる現代日本社会の中で、冠婚葬祭互助会が果たす役割について明確に示した本だからです。


 本書は、以下のような構成になっています。


第一章:現代社会に見る無縁化の実態
第二章:将来に不安を抱える潜在無縁かと絆の問題
第三章:自分の「死」を考えることが縁と絆をつくる
第四章:「自助」「公助」「互助」が無縁社会を救う


 現代の日本では、年間30000人が自殺し、32000人が孤独死しています。わたしたちは、そんな社会でどのように生きればいいのか。冠婚葬祭互助会をまとめる保証株式会社の社長である著者が、その答えを打ち出します。

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   本書の著者・藤島安之社長と

 


 著者は輝かしい経歴の持ち主で、東京大学法学部を卒業後、通商産業省(現経済産業省)に入省。外務省在スペイン日本国大使館一等書記官、中部通商産業局長、日本銀行政策委員(経済企画庁代表)、外務省パナマ共和国駐箚特命全権大使などを歴任されています。その後、総合商社の双日株式会社副社長などを経て、2010年より互助会保証株式会社の代表取締役社長に就任されました。

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   パナマ勲章伝達式にて

 


 冠婚葬祭互助会の健全な発展の支援に尽力される一方、日本・パナマ企業交流会事務局長やベトナムものづくり人材育成調査委員会委員長を務められるなど、国際活動も活発に行われています。昨年10月11日にはパナマ大統領から名誉ある「バスコ・ヌニェス・デ・バルボア大十字勲章」を授与されています。わたしは、ザ・ペニンシュラ東京で行われた勲章伝達式に参列させていただきました。


 「はじめに」で、著者は「『無縁社会』と呼ばれるようになった日本で、高齢者を巡る状況はどのように変化してきているのか。また、どうすれば周囲との縁や絆を再構築できるのか。私は、『互助会保証会社』の社長という立場から、可能な限りのヒントを提供したい」と述べています。著者が社長を務める互助会保証会社は、経済産業大臣から指定を受けた指定受託機関です。冠婚葬祭互助会に対する保証事業を行うために、互助会と金融機関の出資で設立されました。わが社をはじめ互助会各社が日頃から大変お世話になっています。


 互助会の業界団体である全互協では、「無縁社会の克服」をテーマに広報活動を展開してきました。昨年1月にはパネルディスカッション「無縁社会シンポジウム」を開催し、その内容は『無縁社会から有縁社会へ』(水曜社)にまとめられました。同書の中で、6人の論客が無縁社会克服のための持論を展開しています。一方、『無縁社会を生きる』のほうは多くの調査資料から社会動向を分析することによって「無縁社会」への処方箋を提示しています。2冊の本は相互補完関係にあるように思います。


 著者は、多くの調査資料から「気になる社会動向」を分析した上で、「無縁社会」への処方箋を提示されています。


 「問題は無縁よりも無絆にある」というのが著者の主張です。
 問題は、家族のいない無縁だけではありません。親子の間でも面倒を見たくない、掛けたくないと思っている人が増えているのです。葬式の簡素化という背景には、「わが子には葬式で迷惑をかけたくない」と思う親の増加があります。いくら血縁はあっても、ここには「互いに気遣い、支え合おうとする絆」が結ばれていません。このように、「無絆社会」の進展を著者は指摘するのです。


 さらに、「自分の死を見つめること」に無縁社会を生き抜くヒントがあると喝破する著者は、次のように述べます。


 「以前の日本では、『死』についておおっぴらに語ることは、忌み嫌われた。しいかし、現代社会では、平均寿命が大幅に伸び、高齢者の割合も急速に高くなっている。そのため、多くの人が死について意識するようになった。
 その結果、死を考えることは、既にタブーではなくなっている。
 影の存在が、光の明るさを際立たせる。同様に、自らの死について考えを巡らせると、『生きる』ことの意味や大切さがはっきりと見えてくるものだ。そして、家族や近隣の人々とのつながりを取り戻すことが、どんなにかけがえのないものかも見えてくると思う」


 「自分の死を見つめる」ことで、誰もが自分の周囲の人間を大切に思えます。そして、そこから、互いに助け合う社会が実現する・・・・・「死を見つめ、縁を作る」という結論は、もはや調査データを超越した一流の人生観にほかなりません。具体的には、「自助」「公」「互助」の3つが重要であると、著者は述べます。そして、まずは自らの足で行動し人間関係を拡げるような「自助」から始めることを具体的にアドバイスしています。


 社会の無縁化が進む中で、人々の「縁」を深め、「絆」を強める力を互助会は持っています。本書には各地の互助会の近年の取り組みも紹介されています。P.134にはわが社のセレモニーホール「北九州紫雲閣」、グリーフケアサロン「ムーンギャラリー」、写真館「ハートスタジオ」、カルチャーセンターを運営するNPO法人の「ハートウェル21」、高齢者複合施設「サンレーグランドホテル」などが紹介されています。


 また、P.144~156では、わたしも登場します。サンレー社長の佐久間庸和として、「隣人とのつながりを強くするためにはどう動けばよいのか?」というタイトルのインタビューに答えています。わたしは、わが社が行っている「隣人祭り」など、人々の絆を構築する様々な活動について提言しつつ、以下のような発言もしています。


 「私は、『血縁がない場合は、地縁の出番だ』というふうに考えています。家族がいない人は、隣人が支えなければならない。今は家族がいない人が増えているので、近隣との縁を強めることが大切。血縁・地縁は、社会全体のセーフティネットとしても機能しているのです」


 「人は、どこまで行っても、血縁や地縁から離れることはできないのです。そのことは、震災以降、多くの人の心に刻まれたと思います。今こそ、私たちは『縁』に満ちた社会を取り戻さなければならないのです」


 「現代の自由な社会のなかで、冠婚葬祭というセレモニーやイベントなどを通じて、家族や近隣との絆を結び直す。それが、互助会の使命だと、私は信じているのです」


 著者も「おわりに」で、次のように儀式の重要性を訴えます。


 「人が生まれてから亡くなるまで、数多くの儀式を経験する。
 生まれたばかりの赤ちゃんには、『お宮参り』をさせるし、成長すれば、『七五三』や『十三参り』といった儀式に参加する。やがて、「成人式」や『結婚式』を通過し、いずれは我が子のお宮参りや結婚式にも参加するだろう。歳をとれば『還暦』や『喜寿』を祝い、夫婦では『銀婚式』『金婚式』などを迎える。
 そして、人生の最後は『葬儀』で締めくくるわけである。
 近年、ともすれば儀式は軽視されがちになっていた。だが、儀式の大切さは、いずれ見直されると信じている。人生の節目をきちんと祝うことは、これまでの生き様や周囲との絆を再確認し、今後の暮らしをよりよく生きるためのきっかけになると思うからだ」


 その儀式を守っていく企業こそが、冠婚葬祭互助会です。来るべき未来において、互助会の果たす役割はさらに大きくなっていくと、互助会保証の現社長は確信しておあれます。まことに素晴らしいことであり、心強いことです。

 今年の8月、全互協の総会にあわせて開催予定の「儀式創新シンポジウム」におけるパネルディ・スカッションで、著者とわたしはともにパネリストとして参加が予定されています。日本人の「縁」と「絆」を担う儀式の持つ重要性と可能性について、大いに意見交換させていただくことを今から楽しみにしています。