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金魚屋古書店出納帳(上・下巻)』

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No.0664

 

 『金魚屋古書店出納帳』上・下巻、芳崎せいむ著(小学館)を再読しました。

 

 知る人ぞ知る「漫画」がテーマの「漫画」です。現在も月刊「IKKI」に連載中の「金魚屋古書店」が有名ですが、本書はその前に発表された、いわば序論であり、前奏曲です。こちらを先に読んだほうが登場人物の関係などが理解できて、「金魚屋古書店」のほうも楽しめます。

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   登場するのはすべて実在の漫画

 


 巨大な地下倉庫を持ち、「ないものはない」ほどの品揃えを誇る、伝説の漫画古書店の物語です。石森(石ノ森ではありません)章太郎の『サイボーグ009』にはじまって、水木しげるの『河童の三平』、手塚治虫の『キャプテンKen』、大城のぼるの『火星探検』、さいとうたかおの『ゴルゴ13』、あだち充の『タッチ』、田淵由美子の『フランス窓便り』・・・・・とにかく、実在する漫画作品が続々と登場します。

 

 さまざまな漫画を中心にして、人々の心の交流が描かれます。共通しているのは、けっして漫画の内容そのものには入っていかないこと。あくまで、漫画は人間たちの繰り広げるドラマの脇役なのです。これが続編の「金魚屋古書店」になると、漫画のほうが前面に出てくる感じで、ウンチクも多くなります。こちらの「金魚屋古書店」のほうはあくまで人間が主役なので、漫画に詳しくない人でも安心して読めます。


 本書の下巻には、2つの漫画の神様の記念館が紹介されています。兵庫県宝塚市にある「手塚治虫記念館」と鳥取県境港市にある「水木しげる記念館」です。

 

 この両記念館は、わたしも訪れました。考えてみると、わたしも結構な漫画好きかもしれませんね。本書に収録された作品の中では、個人的に、『火星探検』の登場する第6話「さらば火星よ」が一番好きです。また、『タッチ』をめぐって初恋が展開される第8話「青い空、白いボール」にはちょっと胸がキュンとしました。

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   実在の漫画を素材にした古書店物語


 さて、『金魚屋古書店出納帳』の続編が、『金魚屋古書店』第1~13巻、芳崎せいむ著(小学館)です。さまざまな漫画を取り巻く一話読みきりの作品が揃っています。『金魚屋古書店出納帳』に比べると、一話の長さは短くなっています。

 

 そのため、人間ドラマを描く余裕がなくなって、漫画のほうが主役になってきた感があります。金魚屋で働く人々やその周囲の人々のキャラクターは魅力的なのに、ちょっともったいない気がしました。それと、どんな人間ドラマでも強引に取り上げている漫画のテーマに合わせようとしている作品がいくつか目につきました。

 

 もちろん、「漫画」をテーマにした漫画というアイデアは素晴らしいのですが、毎回そのテーマで感動させようというのは無理があるように思います。1巻から13巻までを続けて読むと、ちょっと飽きてきます。


 ただ、作者の漫画に対する愛情と知識には感服します。わたしも、なつかしい漫画にたくさん再会することができました。

 

 第1巻に出てくる『もーれつア太郎』(赤塚不二夫)、第2巻の『アドルフに告ぐ』(手塚治虫)、『宮澤賢治・漫画館』(手塚治虫ほか)、『銀河鉄道999』(松本零士)、第3巻の「楳図かずお」作品、第4巻の『デビルマン』(永井豪)、『怪奇ロマン傑作選』(わたなべまさこ)、第5巻の『あしたのジョー』(高森朝雄作・ちばてつや画)、第8巻の『ぼのぼの』(いがらしみきお)、『ドラえもん』(藤子・F・不二雄)、第12巻の『キャプテン』(ちばあきお)、『ミステリアン』(西岸良平)、『MMR マガジンミステリー調査班』(石垣ゆうき)、そして第13巻の『MASTERキートン』(浦沢直樹)などが登場したときには感激しました。それぞれの作品に思い出がたくさん詰まっていることを確認しました。

 

 思えば、わたしも、これまでに多くの漫画を読んできたものです。本書では、実在する漫画をもとにストーリーが進んでいきます。ですので、自分の思い出の漫画が登場すれば、間違いなく楽しめるでしょう。

 

 でも、これまで漫画をあまり読んでこなかった人にとっては、面白くないかもしれません。そう、本書は徹頭徹尾、「漫画」の漫画なのです。各巻の終わりには、登場した漫画作品についてのウンチクが書かれており、これも漫画好きにはたまりません。