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陽だまりの偽り』

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No.0601

 

 『陽だまりの偽り』長岡弘樹著(双葉文庫)を読みました。

 

 帯には、「ベストセラー『傍聞き』で大注目の著者、瞠目のデビュー作!」「21世紀最強の短編ミステリ作家の飛翔に同行せよ!・・・・・村上貴史氏(解説より)」と書かれています。そう、本書は短編集『傍聞き』よりも先に書かれたデビュー作なのです。


 本書には、「陽だまりの偽り」「淡い青のなかに」「プレイヤー」「写心」「重い扉が」の5つの短編小説が収められています。

 

 例によって、ネタバレにならないように自分でストーリーを追うのは避けたいと思います。表紙カバー裏には、次のように本書のないようが紹介されています。

 

 「物忘れのひどくなってきた老人が、嫁から預かった金を紛失。だがこのことで、老人は同居している彼女の気持ちに触れる――表題作。市役所管理の駐車場で人が転落死した。事件は役所内の人事に思いもよらぬ影響を与えた――『プレイヤー』。日常に起きた事件をきっかけに浮かびあがる、人間の弱さや温もり、保身や欲望。誰しも身に覚えのある心情を巧みに描きだした5編。2008年度日本推理作家協会賞受賞作家のデビュー作、待望の文庫化」


 『傍聞き』同様に軽快なテンポで一気に読めました。しかも、わたしは『傍聞き』よりも本書のほうが好きです。いずれの作品も緊迫した非常事態が描かれ、ハラハラするのですが、最後はとても温かい気分になれます。『傍聞き』よりも「人情噺」の要素が強い感じです。いわば、「ハートフル・ミステリー」とでも呼ぶべきでしょうか。第3話の「プレイヤー」だけは異色で、ドロドロ感というか、人間の心の闇の部分が描かれていますが、残りの4作品は読後感が爽やかでした。


 それにしても、大変な短編の名手が現れたものです。1969年生まれとのことなので、まだまだ今後も面白い作品をたくさん書いてくれるでしょう。

 

 ところで、作者の小説にはいろんな職業の人物が出てきます。たとえば、刑事、警察官、消防士、救命救急士、市役所職員、商店主など・・・・・いつかホテルマン、結婚式場のスタッフ、葬儀社のスタッフといったサービス業に従事する人々の話も書いてほしいと思います。

 

 きっと、ものすごく濃い人情噺が生まれる予感がします。