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口説きの技術』

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No.0562

 

 『口説きの技術』山路徹著(角川oneテーマ新書)を読みました。

 

 帯には「1人の女性も口説けずに仕事がデキるはずがない!」「女性の口説き方すべて教えます」と書かれています。なんだか、勇ましそうな感じの本ですね。


 本書の「目次」は、以下のようになっています。

 

「はじめに―女性を口説くということ、世間を口説くということ」

第一章:「聞き上手」は女にモテる

第二章:人を口説ける「笑顔」と「話し方」を手に入れる!

第三章:「知的美人」にモテる男、「成熟女性」を愛する男

第四章:「戦場」で学んだことと「生き残れる」ための技術

「おわりに―モテる男になりたいあなたに」


 著者は、あることで大変有名になった人です。「はじめに」の冒頭には、有名になった理由が次のように書かれています。

 

 「2010(平成22)年の暮れからしばらく、私はワイドショーなどを通して世間を騒がせる存在になっていました。大桃美代子さんとの離婚が成立する前から麻木久仁子さんとの交際を始めていたことが、『ダブル不倫』と報じられ、問題になったのです。

 私はジャーナリストであってタレントではありませんが、あの騒動のあと、バラエティ番組に出演する機会が増えました。最初のうちは番組の中でもずいぶん非難されましたが、やがて私の役回りも変わっていきました。

 『どうしてそんなにモテるのか!?』と問い詰められて、男性タレントの皆さんとやり取りするようなケースが増えていったのです」


 著者が騒動に巻き込まれている最中、わたしは「なぜ、この人がそんなにモテるんだろう?」と不思議に思ったことがあります。

 

 ちょうど、小倉の某理容店で髪を切っていたとき、店のテレビで流れていたワイドショーが著者のことを取り上げていました。それを見ながら、わたしが「なんで、この人、モテるのかねぇ?」とつぶやいたところ、髪をカットしてくれていた若奥さんが「知的な感じがするからじゃないですか? あまり小倉にはいないタイプですよね」と言いました。

 

 そして、美人の若奥さんが「そういえば、お客さん(わたし)も、この人(山路徹サン)に通じる雰囲気がありますよ」などと言うものですから、ドキッとした記憶があります。


 著者は、「女性にモテるということはそれほど難しいことではありません」と断言します。

 そして、モテるためにはこうあるべきだという"あらゆる勘違い"を捨て去るべきであると言います。さらに、自分というものをどこまで素直に見せていけるかという部分にかかってくるとして、次のように述べます。

 

 「女性たちは虚勢を張った男たちなどは求めていないということをまず理解しておかなければなりません。その意味でいえば、虚飾された言葉もまったく必要にならず、恋愛の妨げになるだけです。

 私自身、女性の前で、いわゆる口説き文句のようなものを口にした経験はありません。『口説く』といえば、口八丁手八丁でうまく女性を落とすシチュエーションを連想される人が多いのではないかと思います。しかし、過剰な言葉は相手を警戒させるだけです。

 人を口説くことの本質は、言葉に頼らない部分にこそある気がします」


 興味深いのは、「ダブル不倫」で世間から袋叩きに遭ったとき、著者はあえてテレビのバラエティ番組などに出て、積極的に露出したことです。普通の人は、バッシングの標的となった場合、しばらく息をひそめているものでしょう。

 しかし、著者はあえて人前に出ていき、そこで叩かれることを選択したのです。

 なぜか。その理由について、著者は次のように述べています。

 

 「それは私の生き方とも関係していることです。かつて私はカーレーサーになることを夢見ていたため、中学2年の頃からF1の入門競技ともいえるカートレースを始めていました。練習中の事故がもとでレーサーになる夢はあきらめましたが、そこで学べたこともたくさんありました。その中でもいちばん大きかったのが、"滑りそうになったらブレーキではなくアクセルを踏んで車体を立て直せ"という走りの基本。

 危険なコーナーでは、慌ててブレーキを踏むとスリップをして車をコントロールできなくなるので、アクセルを踏み込んで、路面にトラクションをかけコーナーを脱出します。そのことを私はそのまま人生訓にしています。

 つまり、不測の事態などが起きて窮地に立たされたときにこそ、自重するのではなく、時にアクセルを踏み込むような"非常識"な行為を選択するのもひとつの方法だということです。それによって活路が開かれる場合は少なくありません」

 

 なるほど、この著者の人生訓は、いろんな人にも生かせそうですね。


 しかし、本書のウリは著者の人生訓よりも書名の通り「口説きの技術」、つまり具体的なテクニックの開示にあります。多くの男性が興味を示してやまない「女性を落とすテクニック」の極意とは何でしょうか。著者は、その極意とは、ずばり、"聞き役"に回ることだと断言します。あまりにも陳腐といえば陳腐ですが、やはり、これが王道なのかもしれません。

 さらに著者は、以下のように"聞き役"としてのコツを6つあげています。

 

 1.「どうしたの?」と聞くことから始める。

 2.相手が話しだしたら聞き役に徹する。

 3.その際に自分の意見を持ち込まない。自分の考えを相手に押し付けてしまうと相談にならず、いい聞き役だとはいえなくなってしまうので、注意が必要。

 4.人は話すことで悩みを整理し、解決策を見出すことができる。

 5.さらに相手が元気になるまで聞き続ける。

 6.元気になってきたところで「コーヒーでも飲もうか」というような誘いをかける。


 参考になったのは、女性というものは「怒らない男性」が好きだというくだりです。そういえば、わたしの妻も娘たちも「おっとりした温厚な男性がいい」などと言います。

 わたしは、小倉生まれの玄海育ちで口も荒けりゃ気も荒いほうなので、それを聞くたびに「俺への当てつけか!」と腹を立てて、またまた嫌われてしまうのですが・・・・・本書を読むと、著者がとにかく怒らないことを心がけていることがわかります。著者は、次のように述べています。

 

 「たとえば、コンビニエンスストアで買い物をしていて、店員の態度が悪かったときにも、ひと言、文句を言おうとするのではなく、いま、自分の表情がこわばっていないかと考え、気持ちをやわらげます。会社で誰かともめて雰囲気が悪くなりかけたときにも、不機嫌な顔を見せたり、怒りで顔を歪めたりはしないようにと自分を戒めます。

 そんなときにこそ、にっこりと笑って雰囲気を変えようとしていたならば、やがて自然にそれができてきます。

 何かというとすぐに怒る人もいますが、怒っている姿は相手に不安感を与えるだけでなく、非常に見苦しいものです。怒るというのは、抑制が利いてないということなので、自分の浅さを見せてしまっていることにもなるのです。

 『空き樽は音が高い』という諺もあります。

 中身のない人間ほど、大声を出して騒いでいるということです。

 車に乗っていて、他の車に割り込んでこられたようなときに窓を開けて『バカ野郎!』などと叫ぶような人をよく見かけます。助手席に女性が乗っているときなどは、あえてそうすることで、男らしさを示そうとしているのだとも考えられます。しかし、助手席にいた女性が、それを格好いいと思うことはまずないはずです。すぐに怒鳴るということは、人間としての器量の小ささを見せてしまっているようなものです」

 

 うーん、悔しいですが、いちいちモットモですな。気の短いわたしは、ただただ反省するしかありません。やはり、この本、モテるテクニックよりも著者の人生訓のほうが面白いかも?


 また、著者は「わかってほしい」という気持ちを捨てることが大切だと言います。著者の仕事は、あくまでも戦場の取材がメインです。

 しかし、ときには家庭内暴力=DVなども取材するそうです。その取材の中でDV夫がなぜ怒るのかを突き詰めていくと、日常生活の中でうまくコミュニケーションを図れない苛立ちが怒りに変質していくという図式が見えてきたそうです。著者は、次のように述べています。

 

「常日頃から奥さんや親に対して自分の思いをうまく説明できないという蓄積があるうえで、つい手を出してしまうわけです。それはつまり、どうして自分のことを理解してもらえないのかという悲鳴に似た行為といえます。言葉で感情を説明出来なくなると手が出てしまうのです」

 

 著者は、すぐに怒る上司というのもそれに似ているとして、次のように述べます。

 

 「自分の説明が下手なのを棚に上げて、『どうしてこんなことがわからないんだ!』とストレスを爆発させてしまっているのです。そのときにしても、わかってほしいという気持ちは残っていますが、それは、相手を説得していること、口説くこととは正反対の行為です。それによって、相手の感情がさらに離れていってしまいます」


 そして著者は、いよいよ「口説き」の極意を次のように述べます。

 

 「人に与える安心感を考えれば、声や話し方も重要です。

 以前に久米宏さんが『ニュースの原稿を読むときには低い声のほうが視聴者に届きやすい声だ』というように話していたことがありました。

 それはアナウンサーやキャスターの話術に限ったことではありません。

 人と話をしているときにも、甲高く大きな声で早口に話すよりも、落ち着いた声でゆっくり相手にわかりやすく話していくのがいいわけです」


 そう、「口説き」の極意は、早口にならず、ゆっくり話すことにあるというのです! 著者は、さらに「早口」の弊害について次のように述べています。

 

 「早口というのはまず聞き取りにくいものなので、現実問題として、何度も聞き返さないと話が先に進まないというわずらわしさが出てきます。気が短い人の場合、おっとりしている人と話すより、かえって苛々させられる場合もあるはずです。

 また、あまり早口でしゃべられていると、口を挟みにくくなり、会話が成り立ちにくくなります。それこそ、1人で勝手にしゃべっているという印象を与えてしまい、敬遠されることにもつながります」


 そして、もう1つの「口説き」の極意は意外なところにありました。なんと、著者の声が非常に女性に好まれるのだそうです。著者は、次のように述べています。

 

 「自慢話のようになりますが、電話で話している相手から『その声に、まいっちゃう』と言われたこともあるくらいです。以前、私が出演したバラエティ番組で、私に内緒で、私の声を日本音響研究所の鑑定に出していたケースもありました。男性の声は120~150ヘルツくらいが普通だそうですが、私の声は平均値が60ヘルツで、相手を心地良くさせる周波数だと解説されました」

 

 また、著者は次のようにもシャーシャーと述べています。

 

 「別の番組で、秋吉久美子さんに『なんでそんなにモテるんですか?』と聞かれて『自分でモテるという意識はないんですが、人の相談事によく乗るほうです』と答えたときに、国生さゆりさんから『その声だ!』と言われたこともありました」


 テレビ通販で有名な「ジャパネットたかた」の高田明社長の声は、犬猫も反応してテレビに寄ってくるほど、聞く者の心をとらえるそうです。本書の著者も、どうやら天才的な声の持ち主のようですね。まあ、高田社長の声は高音、著者の声は低音という違いはありますが。

 

 それにしても、声が「口説き」の極意と言われても、そんな声を持っていない読者は困りますよね。もちろん、わたしも含めて・・・・・せめて、早口にならず、ゆっくり話すことだけは心がけたいものです。

 

 あ、それと、けっして怒らないことですね。はいはい。