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Title

怪談』

Category

No.0570

 

 『怪談』柳広司著(光文社)を読みました。

 

 いま話題になっている一冊ですが、いや、これは面白かったです。「久々に面白い小説を読んだ」という実感がしました。


 帯には、「驚き、震えよ。」というキャッチコピーとともに、「鮮やかな論理と、その論理から溢れ滲み出す怪異。小泉八雲ことラフカディオ・ハーンの『怪談』を、柳広司が現代の物語として描き直した異色のミステリー」と書かれています。

 

 そう、本書はハーンの名作をもとにした現代の『怪談』なのです。収録されている作品は、「雪おんな」「ろくろ首」「むじな」「食人鬼」「鏡と鐘」「耳なし芳一」の6本です。わたしが一番好きなのは、夜鳴き蕎麦の屋台をニュータウンの交番に置き換えた「むじな」でした。他にも、「耳なし芳一」に登場する琵琶法師をロックバンドのボーカルに置き換えるなど、「なるほど!」というアイデアの連続でした。

 

 芳一は平家の亡霊を慰めましたが、本書の著者である柳広司は、ハーンの霊を慰めたとさえ思いました。そう、すぐれたリライト作品とは、オリジナル作品の作者に対する最高の供養になるのではないでしょうか。


 わたしは何度も、「うまいなあ!」と著者の筆力に感心しました。日本にも、まだまだ才能豊かな作家がいるのですね。なんだか嬉しくなりました。

 

 1967年生まれの著者は、2001年『黄金の灰』でデビュー。同年に『贋作「坊っちゃん」殺人事件』で第12回朝日新人文学賞を受賞しています。09年には『ジョーカー・ゲーム』で第30回吉川英治文学新人賞と第62回日本推理作家協会賞を受賞。ベストセラー『ジョーカー・ゲーム』は書名だけは知っていました。これほど才能ある書き手の代表作ならば、機会を見つけてぜひ読んでみたいです。

 

 それにしても、本書『怪談』は読者を一気に異世界に引きずりこむ名作だと思います。「怪談こそ文学の醍醐味」と述べたのは佐藤春夫です。そのことを、実感させてくれる一冊でした。