お探しの書名・著者名・キーワード等を入力して下さい

  • HOME
  • 思い出食堂 '12冬の味編
Title

思い出食堂 '12冬の味編』

Category

No.0528

 

 東京は赤坂見附のコンビニで『思い出食堂 '12冬の味編』(少年画報社)というコミックを見つけました。じつは、わたしはこのシリーズの大ファンなのです。

 

 早速購入し、ホテルに帰ってから一気に読みました。

 

 『思い出食堂 A定食編』でシリーズ第1作について書いたことがあるのですが、かなりのアクセスがありました。

 

 現在でも、「思い出食堂」の検索ワードから、当ブログへの訪問者が絶えません。

 

 この『'12冬の味編』はシリーズ最新作で、5冊目となります。毎回、巻頭をカラーで飾る魚乃目三太の作品、青菜ぱせりのシリーズ[朝ごはん亭]など、このコミックでしか読めない名作も多く、毎回とても楽しみにしています。

 

 今回は3つの特集から構成されており、各特集の内容は以下の通りです。

 

特集1 冬のごちそう! すき焼き

    「祖母のすき焼き」「父とすき焼き」「すき焼き定食」

特集2 東京下町の味

    「谷中のメンチカツ」「根津の肉豆腐」「千駄木の親子丼」

特集3 コタツで食べた・・・

    「スルメ」「カップ焼きそば」「肉まん」

    「オイルサーディン」「鍋焼きうどん」「ブリ大根」


 最初の「すき焼き」特集に収められた3本には、どれも泣かされました。「すき焼き」は、鍋料理という特性から「家族」のシンボルになっています。

 

 巻頭カラーの魚乃目三太による「祖母のすき焼き」には、わけあって幼い頃に祖母と2人で生活した少年が登場します。クリスマスも子どもの日も関係のない貧しい暮らしでしたが、少年の誕生日だけは祖母がすき焼きを作ってくれるという話です。たった数枚の牛肉しか入っていないすき焼きは誕生日ケーキのかわりだったのです。最後に成長した少年が自分の誕生日に彼女を連れてきたとき、祖母は「すき焼きは、つつく人が多い方が美味いに決まっとる!」というセルフを吐くのですが、これにはシビレました。

 

 また、「父とすき焼き」には、両親が離婚した少年が登場します。彼は、離婚後にひとり暮らしを始めた父親と2人ですき焼きを作って食べるのですが、これもホロリとくる作品でした。


 「すき焼き定食」の舞台は横浜の商店街にある食堂です。1人の少女がおずおずと食堂の扉を開き、すき焼き定食を1人前注文します。彼女は田舎から横浜の信用金庫に就職したばかりでした。初めてのひとり暮らしで寂しい彼女は、家族の温かさをすき焼きという料理に求めたのです。最後に彼女は食堂の主人に次のように質問します。

 

 「今度の週末、田舎から両親が出て来るんです。横浜の名所教えてくれませんか?」

 

 主人はまず、「そうさな、まず中華街で昼食、元町を散歩して、赤レンガ倉庫かね」と言った後、夜は自分の店へ「どうぞ」と答えます。それを聞いた彼女は、「わあ! 連れてきます、絶対!」と言うのでした。これを読んだわたしが、横浜に1人で住んでいる長女のことを思い出してセンチメンタルになったかどうかは、ご想像にお任せします。


 あと、特集2「東京下町の味」の「千駄木の親子丼」も心温まる話でした。

 

 仕事が忙しくて、いつも家事が満足にできない母親と、留守を預かる祖母を持つ少年は、嫁姑の不仲を子ども心に心配します。なぜなら、祖母はいつも「うちの嫁は料理ヘタでね」と言いながら、食堂で親子丼を食べるのでした。あるとき、母が珍しく食事、それも親子丼を作ってくれました。

 

 「おいしい!」と驚く少年に、母は「でしょ? おばあちゃんが教えてくれたのよ!」と言います。2人の不仲を心配していた少年は、思い切って「ねえ・・・母ちゃんとバアちゃんは仲良いの? 悪いの?」

 

 それを聴いて、母は次のように語りました。

 

 「私の本当のお母さんは、私が小さい時に亡くなってるでしょう? 私がこの家にお嫁に来た時、おばあちゃんが親子丼作ってくれてね、『自分を本当の母親だと思って、何でも言って甘えてくれていいんだから』って言ってくれたの。『親子丼の鶏と卵だって、本当の親子かどうかわからないけど、丼に入ったら親子だろ? 一緒に住めば親子だよ』って」

 

 じつは、祖母と母は実の親子のように仲が良かったのです。「うちの嫁は料理ヘタでね」という口癖も、結局、悪口を言えるくらい祖母は母のことを気に入っていたからなのでした。少年は成長して成人し、すでに中年の後半に差しかかりました。彼は、ありし日の祖母と母を偲んで、なつかしい千駄木の親子丼を食べるのでした。

 

 いやあ、この親子丼にかけた「一緒に住めば親子だよ」というセリフにはグッときました。ただでさえ緩いわたしの涙腺が、さらにユルユルになりました。


 このように、本書には「家族の絆」をテーマにしたハートフル・コミックが満載です。みなさんも、コンビニで見かけたら、ぜひ購入してお読み下さい。きっと、心がポカポカして、家族が愛おしくなることでしょう。

 

 まるで、『むすびびと~こころの仕事』(三五館)に出てくるような感動のストーリーばかりでした。この本には、「家族の絆」を結ぶ実話エピソードが集められています。よろしければ、ぜひ、ご一読下さい!