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遊びの品格』

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No.0488

 

 『遊びの品格』川北義則著(中経の文庫)を読みました。

 

 サブタイトルは「洗練された大人の男の遊び方」です。表紙にはワインのボトルとグラスの写真とともに、「遊び心、趣味、作法、恋愛、お金、芸術・・・・・『遊び』ができる男ほど、仕事も人生も楽しめる!」と書かれています。


 1935年に大阪で生まれた著者は、慶応義塾大学経済学部を卒業後、東京スポーツ新聞社に入社、そこで文化部長、出版部長を歴任しました。77年に退職後は出版プロデューサーおよび生活評論家として活躍しています。

 

 本書の「目次」は、以下のようになっています。


「まえがき」
第1章:大人の男の「遊び方」―遊び心
第2章:心のゆとりをつくる「好奇心」―趣味
第3章:「男の色気」は酒から生まれる作法―作法
第4章:モテる男の「距離」のとり方―恋愛
第5章:ムダ金から生まれる人生の糧―お金
第6章:「心の器」を文化で広げる―芸術


 第1章「大人の男の『遊び方』―遊び心」の冒頭に出てくるマーク・トウェインの『トム・ソーヤーの冒険』のエピソードが印象的です。それは以下のような内容です。


 ある夏の土曜日の朝、トムはポリーおばさんから塀のペンキ塗りを命じられました。


 トムはいやいやペンキ塗りを始めましたが、その塀はとても長く、今日中に終わりそうにありません。そこでトムは一計を案じ、いかにも愉しそうにペンキ塗りをすることにしました。その姿を見て、通りかかった友だちが次々に「ぼくにもやらせてよ」と頼みます。


 トムはしめたと思いますが、最初はわざと断ります。


 やりたくてしかたがない彼らは、「そんなこといわないでさ」と頼み込みます。


 彼らは、トムにリンゴやおもちゃなど自分の宝物まで差し出す始末でした。


 ついには、トムはしぶしぶ折れるフリをして彼らにペンキ塗りをやらせてあげるのでした。


 おかげでトムは、いやなペンキ塗りから解放されたというわけです。


 このエピソードを紹介した後、著者は次のように述べます。


 「ここから導き出される教訓は、いろいろある。仕事が面白くなるかどうかは本人の気持ちの持ちよう一つともいえるし、部下のやる気を引き出すには職場の雰囲気づくりが大事だともいえる。あるいは、人に『どうしてもそれが欲しい、やりたい』と思わせるには、なるべくそれを入手困難、実現困難にすればいい、ともいえるだろう。
 しかし、本書のテーマに沿って、この話からくみとるべき大事な教訓を探すとすれば、それは『仕事とは、いやでもやらなければならないこと』であり、『遊びとは、しなくてもいいのにあえてすること』だという、人生の真理ではないかと思う」


  「遊び」というと、「ムダ」なものと思われがちです。でも、「ムダがなければ、人も組織も伸びない」で、著者は次のように述べます。


 「『ナース・ログ(nurse log・・・看護婦の木)』という言葉がある。森の中で朽ちて横たわっている倒木のことだ。倒木は一見、ムダに見えるが、コケや微生物を育み、土壌を豊かにするなど自然界の重要なサイクルを担い、森を生かしている。この事実に気づかず、森から倒木を排除してしまったら、森はどんどんやせていくに違いない」


 そして、著者は「企業社会という森にもナース・ログはある」というのです。


 また、「遊ぶ人ほど仕事ができる四つの理由」で、「仕事のできる人ほどよく遊ぶし、よく遊ぶ人ほどいい仕事をするものだ。これは私の長い経験からいってもまず間違いのない事実である」と述べています。


 そして、その大きな理由として以下の4つをあげています。すなわち遊びを通じて、


1.心身ともにリフレッシュし、再び仕事に集中できる
2.いろいろな勉強をするので仕事以外の多様な情報を入手できる
3.新たな出会いがあるので仕事以外の人的ネットワークができる
4.前記1~3を通じて発想が豊かになる

 
  このような箇条書きは本書の特徴で、他にも、いろいろと出てきます。


 たとえば、第2章「心のゆとりをつくる『好奇心』―趣味」の冒頭の「金持ちではなく、『人持ち』になる――趣味の効用」では、「地元の趣味の会やスクールに入ってもいいし、身近にその道のベテランがいるなら弟子入りしていろいろ教えてもらえばいい」と述べ、その際に注意してほしいこととして以下の3つをあげています。


1.年齢や学歴や肩書きを持ち出さない
2.年齢や学歴や肩書きに関係なく、先輩には敬意を払う
3.趣味の集まりで仕事の話はしない

 
  また、「一生ものの趣味をつくる『七つの鉄則』」では、「人生を愉しむには、何か一つ、自分だけが熱中できる遊びを持つといい」として、一般的に飽きずに長続きする趣味の共通点を以下のように7つ紹介しています。


1.あまりお金をかけずにできる
2.一人でできる
3.あまり時間をとられない
4.あまり体力を使わない
5.年をとってもできる
6.発表の機会がある
7.幅広い年代と交流できる


 「自由で贅沢な一人旅の愉しみ方」では、一人旅を愉しいものにするポイントとして、以下の4点をアドバイスしています。


1.旅情報に頼らない
2.予定を立てない
3.ハイシーズンは避ける
4.荷物はなるべく少なくする


 中には、「当たり前じゃないの」というような箇条書きもありました。


 たとえば、「混浴ライフを紳士的に愉しむ」などがそうです。著者は、一般的に男性が守るべき混浴のマナーとして、次の5点をあげます。


1.じろじろ見ない
2.女性が湯船に出入りするときは目をそらす
3.絶対に女性にすり寄ったり触れたりしない
4.卑猥な言葉をかけない
5.女性に自分の一物を見せない

 

 いや、これには爆笑しました(笑)。真面目に書いているところが、おかしい! なんだか、本当に混浴したくなってきますね(笑)。


 第3章「『男の色気』は酒から生まれる作法――作法」では、最初に「男の品性は、食の作法に表れる」として、女性から見た「一緒に食事をしたくない男」のワースト3は以下の通りだそうです。


1.食べ方が下品な人
2.店員に対して横柄な人
3.ウンチクや文句をタラタラいいながら食べる人


 食通で知られた作家の池波正太郎氏は著書『男の作法』(新潮文庫)で、鮨屋で通ぶる客をこういって嘆いたそうです。


 「飯のことをシャリとか、箸のことをオテモトとか、醤油のことをムラサキとか、あるいはお茶のことをアガリとか、そういうことを言われたら、昔の本当の鮨屋だったらいやな顔をしたものです。それは鮨屋仲間の隠語なんだからね。お客が使うことはない。
 ふつうに、『お茶をください』といえば、鮨屋のほうでちゃんとしてくれる。だけど、いま、みんなそういうことを言うね。鮨屋に限らず、万事にそういう知ったかぶりが多い」


  鮨といえば、『鮨に生きる男たち』早瀬圭一著(新潮文庫)の次のくだりが興味深かったです。この本の著者がミシュランの3つ星の名店「すきやばし次郎」でお任せで握ってもらったら、こういう順番で出てきたそうです。


 1.まこがれい、2.烏賊(すみ)、3.烏賊(あおり)、4.かんぱち、5.赤身、6.中トロ、7.大トロ、8.小肌(新子)、9.蒸しあわび、10.鯵2カン、11.車海老、12.かつお、13.赤貝、14.しゃこ、15.うに、16.小柱、17.いくら、18.穴子、19.玉子焼き、20.かんぴょう巻き。


 これが鮨の一つの王道的コースというわけで、著者は「ウンチクを語りたい人は、参考までにどうぞ」と書いています。


  第4章「モテる男の『距離』のとり方―恋愛」では、モテ男になるための秘訣がたくさん紹介されています。著者は、いくら見た目が恰好よくても、以下のような条件に当てはまる男はダメだといいます。


・一方的にしゃべり過ぎる
・上から目線で偉そうに話す
・自慢話が多い
・愚痴が多い
・話が軽過ぎる(バカっぽい)


 といった会話力のない男は、まず女性から嫌われるというのです。

 

 さらに著者は、「気が利かないどんくさい男もダメだ」として、以下の例をあげます。


・女性が重い荷物を持って大変そうにしているのに持ってあげない
・女性が入りやすいようにドアを開けたまま持ってあげない(すぐに手を離す)
・初対面のとき「ダバコ吸ってもいい?」のひと言がいえない
・平気で女性に危ない車道側を歩かせる
・ドライブのとき女性のためにトイレ休憩の気遣いができない
・カラオケで女性の歌をちゃんと聴いてひと言ほめることができない


 といった相手を思いやるやさしさのない男は、それだけで女性に敬遠されるのです。


  とまあ、このような感じで、本書の内容は「遊び」について語りながら「人生」そのものについて語っているのです。


 男として、大人として、どう振る舞うべきか。その意味で、「大人入門」ともいうべき内容であると思いました。


 パラパラッと本を開いて、どのページからでも気軽に読める好著です。