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Title

シガテラ』

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No.0435

 

 『聖☆おにいさん』『進撃の巨人』『テルマエ・ロマエ』『I 【アイ】』と、ここまで話題の漫画を紹介してきましたが、それらはすべて現在連載中の作品です。ここで紹介する漫画は、2005年にすでに連載が終了しています。


 しかも、書店とかアマゾンではなく、つい先日コンビニで求めた本です。初めて読んだのですが、いやはや大変な名作でした。『シガテラ』古谷実著(講談社)という作品です。


 著者は1973年生まれで、埼玉県生まれ。ハリウッド美容専門学校を卒業し、1年間ほど美容院で働いていたそうです。93年に「週刊ヤングマガジン」誌上の『行け! 稲中卓球部』でデビューしました。この作品は大ヒットし、アニメ化もされています。第20回講談社漫画賞も受賞しました。その後、著者は『僕といっしょ』『グリーンヒル』『ヒミズ』など、閉塞的な状況にある思春期の主人公がもがく姿を描いてきました。


 著者の商業誌連載第5作目である『シガテラ』は、「週刊ヤングマガジン」誌上で2003年から2005年にかけて連載されました。単行本は全6巻ですが、コンビニ仕様の新装版は全3巻。単行本2冊分をコンビニ本1冊にまとめているわけですが、価格はほぼ同じです。つまり、これまでの半分の価格になっているわけですから、ありがたいですね。しかも、絵や活字が小さくて読みにくい文庫版と違い、コンビニ本は読みやすいですし。


 タイトルの「シガテラ」とは、毒のことだとか。詳しくは、ある種の魚類が持つ毒素、またそれによって引き起こされる食中毒の総称だそうです。そんな言葉をタイトルとしたのは、なぜか。それは、主人公の周囲に起こる出来事を「毒」だととらえているからでしょう。


 この物語の主人公である男子高校生の荻野優介の周囲には、ものすごく不運な出来事や、逆にものすごく幸運な出来事が相次ぎます。ラッキーかアンラッキーかの差はあれど、それらの過剰な出来事は日常を蝕む非日常という「毒」なのです。


 詳しいストーリーを紹介するとネタバレになる恐れがあるので、各巻の裏表紙に書かれている内容説明のコピーを紹介しましょう。コンビニ仕様の新装版は、それぞれ『告白』『邪心』『我欲』というサブタイトルがつけられています。


 まずは、『告白』の内容紹介から。


 「バイクに乗りたいと願う高校2年生の荻野優介。
 教習所で出会ったひとつ年上の南雲ゆみにひと目惚れ。
 学校では、親友の高井とともに、谷脇にイジメられる毎日。
 些細な日常のそこかしこにある"毒"が、
 荻野の自覚なしに広がっていく・・・・。」


 次に、『邪心』の内容紹介から。


 「交際も順調で、合体目前の荻野君と南雲さん。
 ワクワクの日々が続くものと思いきや、
 高井が知り合った『森の狼』に谷脇が拉致される。
 アキコちゃんの依頼で、荻野も谷脇の捜索に加わるが・・・・。」


 アキコちゃんというのは、荻野をイジメる不良・谷脇の彼女です。


 そして、最後の『我欲』の内容紹介を。


 「高校最後の夏を迎えた荻野優介。
 大学生になろうと猛勉強を開始するが、
 谷脇も現れ、さまざまな誘惑に振り回される日々。
 荻野と南雲さんの未来はいかに―?」


 ネタバレになるので書きたくても書けないのですが、ラストはちょっと意外で驚きました。地味といえば地味なのですが、人生をリアルに描いていて、わたしは感動しました。


 高校時代の荻野は自分に自信が持てず、未来への不安でいっぱいでした。一人前の社会人になれるかどうかを本気で心配していました。


 本書の最後には、社会人になった荻野が不安でいっぱいだった高校時代を振り返る場面が出てくるのですが、それを読んだとき、わたしは不覚にも涙ぐみました。自分自身も、高校時代に思っていた通りの大人になっているのかなと思いました。


 高校時代の自分から「思ったより立派じゃないか」と言われるか、「全然ダメじゃん!」と言われるか・・・・・。それは、わかりませんが、人はみなさまざまな不運や幸運といった青春の"毒"に翻弄されて、大人になっていくのでしょう。


 スガシカオが作ってSMAPが歌った「夜空ノムコウ」に出てくる「あのころの未来に、ぼくらは立っているのかな・・・」というフレーズが心に浮かんできました。


 また、荻野君と南雲さんの2人の恋の結末は、ユーミンの「悲しいほどお天気」を連想しました。とてもセンチメンタルな気分になってしまいましたね。


 久々に、漫画のラストシーンで泣きました。わたしの心に生まれたのは、激しい感動ではなく、しみじみとした静かな感動でした。


 本書は、青春の憧れと不安を見事に描いた傑作です。たぶん、まだ全国のコンビニの店頭に置かれていると思います。お近くのコンビニで見つけた方は、ぜひお買い求め下さい。


 若い方々にも、昔若かった方々にもおススメします!