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死者のための音楽』

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No.0418

 

 『死者のための音楽』山白朝子著(メディア・ファクトリー)を読みました。

 

 本書は、怪談専門誌「幽」に発表した短篇小説集です。帯に「これは愛の短篇集だ。」と、乙一氏が推薦文を書いています。


 わたしは、山白朝子という作家はまったく知りませんでした。それでも本書を読む気になったのは、本書のタイトルに惹かれたからです。


 『死者のための音楽』・・・・・なんと、甘美でロマンティックなタイトルでしょうか! まさに、わたしのために書かれたような本だという予感がしたのです。読んだ後で知ったのですが、この山白朝子というのは某有名作家の別名だそうです。


 本書には、次の6つの物語が収められています。


「長い旅のはじまり」
「井戸を下りる」
「黄金工場」
「未完の像」
「鬼物語」
「鳥とファフロッキーズ現象について」
「死者のための音楽」


 実際に通読してみると、わたし好みの作品が3つ、まったく何も感じなかったものが3つと、フィフティー・フィフティーというところでした。


 気に入ったのは、「井戸を下りる」、「黄金工場」、「死者のための音楽」です。いずれも少女マンガの原作のように、情景がリアルに浮かんでくるようなファンタジー・ホラーでした。最後の「死者のための音楽」では、耳の不自由な少女が登場します。


 しかし、その耳が不自由な少女には音楽が聞こえるのです。それは、臨死体験のように死にゆく人だけに聞こえる音楽でした。本書には、次のような少女のつぶやきが書かれています。


「あの曲は、死者への慈悲だったのかもしれないね。こわくないように、むこうの世界にいるどなたかえらい人が、とどけてくださったのかもしれないね。もう楽になっていいからね、とおっしゃってくれてるみたいよ。わたしは、だから、ちっともこわくないの。
 それは、あらゆることをゆるして、だれかにだきしめてもらうような歌声なんだ。すべての死者は、あの音楽を聞きながら、ねむりにつくのかもしれないね。そうだったらいいのにと、わたしはおもっているよ」


 この物語を読んで、わたしは、かのタイタニック号が沈没するとき、最後まで楽団が演奏していた賛美歌を連想しました。「主よみもとへ近づかん」をはじめ、賛美歌というものは、もともと死者がそれを聞きながら永遠の眠りにつく音楽なのかもしれません。


 わたしは個人的に、天国にはモーツアルトの音楽が流れているような気がします。