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ZOO(1・2巻)』

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No.0427

 

 『ZOO』1・2巻、乙一著(集英社文庫)を読みました。

 

 もともとは1冊の単行本として刊行された短篇集ですが、文庫化にあたって2分冊されました。いずれも、ジャンル分けができない奇妙な味の佳作揃いです。


 第1巻には、次の5つの物語が収められています。


 母から虐待される姉と溺愛される妹・・・双子姉妹の物語「カザリとヨーコ」。


 謎の犯人から拉致監禁された姉と弟の脱出の物語「SEVEN ROOMS」。


 互いに相手の姿が見えない父と母を持つ少年の物語「SO-far そ・ふぁー」。


 死を看取るために創られたロボットの物語「陽だまりの詩」。


 恋人が殺された動物園に通い続ける男の物語「ZOO」。 

 

第2巻には、次の6つの物語が収められています。


 目が覚めたら、何者かに刺されて血まみれだった資産家の物語「血液を探せ!」。


 馬小屋で育った殺人鬼と家族思いの少女の物語「冷たい森の白い家」。


 義弟の死体を彼の部屋にあるクローゼットに隠す女の物語「Closet」。


 自らが吐いた呪いの言葉が現実化していく少年の物語「神の言葉」。


 ハイジャックされた機内で安楽死の薬を売り買いする物語「落ちる飛行機の中で」。


 最後は、公園の砂場の下から人の声がする物語「むかし夕日の公園で」。


 ホラー、サスペンス、ブラックコメディと何でもありで、著者のカメレオン作家ぶりが堪能できますが、いずれの作品にもシュールでグロテスクな「狂気」が描かれていいます。ある意味で、本書は「狂気のカタログ」、いや「狂気の動物園」かもしれません。


 とにかく、著者のアイデアの奇抜さには脱帽です。絶対にありえないような不条理なアイデアを読んでいるうちにリアルに感じさせてしまう筆運びにも脱帽です。


 第2巻の「解説」を作家の島本理生氏が書いていますが、『ZOO』が初めて読んだ乙一作品だそうで、「乙一さんの描く物語はどれも最後まで引っ張っていく力が強く、読んでいる瞬間、瞬間に絶えず読者の心を掴んでいる」と述べています。「ZOO」の中で、著者は次のように書いています。


 「『一瞬』をいくつも連ねれば『時間』が生まれるのは当たり前で、そうなってようやく、『変化』を描き出すことができる。すなわちそれは、物語を紡ぐことができるということだ」


 島本氏によれば、著者から紡がれる物語も、一瞬、一瞬をおざなりにしていない印象を受けるそうです。だから、たびたび「天才」とい呼ばれてきた著者は、同時に「職人」の丁寧さも感じさせるというのです。島本氏は、次のように書いています。


 「一度、文芸誌の企画で対談をしたときに『僕の中に理想的な物語の曲線というものがあって、物語の美しい完成形みたいなものですが、僕はそこに向けて、物語を作ったり曲線を整えたりしているんです』とおっしゃっていたことを、今でも覚えている。一方的な作者の欲求ではなく、読者を楽しませることを優先している人なのだろう」


 本書『ZOO』を読むと、そのことがよく実感できます。著者は、現代日本を代表するエンターテインメント作家だと言えるでしょう。


 なお、第1巻に収録された5本は映像化され、DVDも発売されています。わたしも観ましたが、最初の「カザリとヨーコ」は『むすびびと~こころの仕事』(三五館)で一緒に本を作った作家の東多江子さんが脚本を担当されていて、驚きました。


 なかなかの豪華キャストで、「SEVEN ROOMS」には吉高百合子が、「SO-far そ・ふぁー」には神木隆之介が出演しています。そして、漫画家・古屋兎丸がキャラクター・デザインを手がけた「陽だまりの詩」が秀逸でした。