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日々是怪談』

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No.0381

 

 『日々是怪談』工藤美代子著(中央公論社)を読みました。

 

 著者のエッセイ集『もしもノンフィクション作家がお化けに出会ったら』は異常なほど面白かったのですが、それはもともと「日々続々怪談」のタイトルで雑誌に連載されていました。つまり、本書の続篇が『もしもノンフィクション作家がお化けに出会ったら』だったのです。前作となる本書も「婦人公論」に連載されていたエッセイを集めたものですが、やはり非常に面白い本でした。


 本書には単行本と文庫本の両方がありますが、いずれも現在品切れです。文庫の古書をアマゾンで注文しようとしたら、最安値で4800円もしたので驚きました。それで、2000円ぐらいだった単行本の古書を求めた次第です。それも1冊しかなかったので、現在は「お取り扱いできません」になっています。現在、この本をどうしても購入して読みたければ、4800円の文庫しかないわけです。どうやら、この本、ちょっとしたレア本なのかもしれません。


 本書には、24の怪談実話が収められていますが、いずれもショッキングな恐怖というより、ジメッーとした日本人好みの怖さです。最初の「中国娘の掛け軸」の冒頭に、以下の一文がありますが、本書の内容が凝縮されています。


 「アレが起きるのは、たいがい真夜中から早朝が多かった。しかも、いつも一人のとき」


 自分しかいないはずの部屋の片隅に人の気配を感じる。思いつきで買った人形が次々に不幸を呼び込む。知らない間に、自分のドッペルゲンガーが出現する。そして、「実はね、すっごく変なことがあったのよ...」が著者の口癖となる。それにしても、こんなに膨大な怪奇現象がすべて実話とは! ちょっと信じられないような気がしますが、霊媒体質の人なら有り得るのでしょうか。もしも、これらの怪談がフィクションだったとしたら、それはそれで凄いと思います。


 小泉八雲ことラフカディオ・ハーンの生涯をシリーズで描いた作家だけあって、日本における「怪談」の真髄を知り尽くしています。これだけ怖い話を創作で書けるのであれば、著者は当代一のホラー作家かもしれません。


 24編の中で、個人的には「『ママ』と呼ぶ声が」「誰かの手が」「里帰り」「淋しい人たち」「夢の出口」がゾーッとしました。節電で蒸し暑い夏の夜におススメです。


 また「三島の首」は、『もしもノンフィクション作家がお化けに出会ったら』所収の「三島由紀夫の首」の原型となるエッセイでした。ただし「三島の首」を書いたときは、川端康成夫人がまだ存命中だったようで、川端本人と未亡人の名前が隠されています。そのせいもあってか、また一層、隠微というか神秘的な雰囲気を放っていると思いました。


 著者は、「どうも世間の他の人は、私ほどたびたびアレに出逢ってはいないようなのだ。それならばいちおう記録として、自分の身に起きたアレを書き残しておいてもいいかなあとこの頃は思っている」というところから本書を書いたそうです。いやはや、それにしても何という日常!


 わたしは『もしもノンフィクション作家がお化けに出会ったら』と『日々是怪談』を続けて読んだわけですが、タイトルは後者のほうが数百倍いいですね!


 タイトルのみならず内容も非常に面白く、怪談実話の歴史に残る名著だと思いました。こんな名著がずっと絶版だなんて、もったいないと思います。