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論語一語』

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No.0267

 

 『論語一語』長尾剛著(かんき出版)を読みました。

 

 著者はノンフィクション作家で、日本史・日本文学・儒教・仏教・心理学などの人文科学系ジャンルを、わかりやすい読み物にする作家として定評があるそうです。


 まず、本書で感心したのは、その装丁の美しさです。レモンイエローのカバーに大ぶりのホワイトの帯が、とてもスタイリッシュです。帯に記されている「ぶれない軸で論語で築け!」というキャッチコピーもシンプルで力強いですね。


 著者は、本書の「はじめに」で、『論語』は誰もが「自信を持てる自分」「好きになれる自分」へと成長できる方法を教えてくれると述べています。


 「せっかく一度きりの人生なのだから、いつも前向きな気持ちで進むほうが、生きる手応えがあるっていうものじゃないか!」と語りかけてくれるというのです。


 だから、『論語』は楽しいと、著者は言います。そんな『論語』だからこそ、「いろいろなことに行き詰まり、誰もが毎日の暮らしに少しずつ息苦しさを感じている現代に、必要な書物」であるというのです。

 本書では、8つの章で『論語』の言葉をまとめています。


 それぞれの章のタイトルは、「自己」の成長、「仕事」の流儀、「人間関係」の美徳、「家族」の本質、「学び」の真髄、「リーダー」の信条、「教育者」の心得、真の「豊かさ・正義」となっています。この章立て、編集の仕方も、類書と比べて、非常に良くまとめられているという感想を持ちました。


 また、各章の間に置かれている「論語の歴史」「孔子の生涯」というコラムが簡潔ながら興味深い記述がありました。特に、著者は一貫して「礼」を重要視しているようで、たとえば「論語の歴史①」では次のように述べています。


 「『論語』のもっとも重要なキーワードは『礼』です。


 人が守るべきもの。人の世を平和に導くもの。全人類共通の絶対ルール。それが『礼』だと、孔子は主張します」


 また、「論語の歴史②」では次のように述べています。


 「孔子という人は、徹底したヒューマニストで、『他人への愛情だけでできあがっているような人』でした。


 彼が前述した『周の礼』に行き着いたのも、それが『人同士の思いやり、愛情を、誰にでも解るように形にしたもの』だと、認めたからです。


 したがって、孔子の説く『礼』の実践は実際には、あらゆる文化、あらゆる立場の人が、納得でき、喜びを感じられるものです。『君子』の実像とは、とことん突き詰めると『誰にでも思いやりのある人』というだけの話なのです」


 さらに「孔子の生涯③」では、孔子の母親の実家が「儒」を家業にしていたことにふれ、次のように述べます。


 「儒とは、いわゆる『冠婚葬祭屋』」です。


 どんな文化であれ冠婚葬祭には伝統的な礼儀作法がつきものですから、この母方の家業が、儒教のバックボーンに影響しているのでしょう」


 最後に「孔子の生涯④」で、著者は孔子の夢について書いています。


 「彼の夢。それは、高級役人となることでした。つまり孔子は、決して浮世離れした人ではなく、政治的野心激しく燃やし、権力を求める男だったのです。


 こう聞くと、私たちのイメージとはギャップがあるかもしれません。


 しかし、孔子の人生のテーマは、あくまでも『人の世を思いやりの深い、秩序ある平和な世界に導く』ことでした。


 そして、学び続けた彼の結論が『思いやりを完璧な形にしたものが伝統的な礼儀作法である』ということだったのです。


 つまり、彼にとっては、礼儀作法を社会に広めることこそが正義であり、その実現のためには、社会を直接統治する権力が必要だったわけです」


 天下布礼をめざす「冠婚葬祭屋」のわたしにとって、「礼」に最大の価値を置いた本書は、まことに勇気が湧いてくる『論語』入門でした。