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あなたにあえてよかった』

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No.0222

 

 『あなたにあえてよかった』大浦静子著(北國新聞社)を小松発・福岡行のANA315便の機内で読みました。昨日、著者自身からプレゼントされた本です。じっくりと読ませていただき、しみじみと泣かせていただきました。


 著者は、最愛の娘である郁代さんを、ガンのために34歳の若さで亡くされました。本書は、その郁代さんが生まれたときから亡くなるまでの「いのち」の記録です。

 

 自らが保育の世界に生きてこられた静子さんが、限りない愛情を注いで育てたわが子こそ郁代さんでした。前向きな性格で、周囲への気配りを忘れないお嬢さんでした。

 

 郁代さんは、旅行会社の添乗員として世界中を飛び回っていました。特に、オーストラリアの海を深く愛していました。郁代さんは、あと3日したら日本へ帰ってくるという時に亡くなられました。当時オーストラリアにいた婚約者の方の落ち込みはひどいものだったそうです。

 

 でも、郁代さんは婚約者の彼に宛てた遺書を残していました。静子さんは、「それを読んだ時の、パッと輝いた彼の顔が忘れられません。この遺書がなかったら、立ち直れなかったかもと思うほどです」とメールに書かれています。


 郁代さんは婚約者だけでなく、御両親、姉、兄にも遺書を書かれていました。静子さんは「私が最も感動したのは、自分より一歳下の兄嫁にも用意してあったことです。これまでの感謝の言葉が書かれていました。私なら、親以外にそこまでするだろうかと・・・」と書かれていますが、まったく同感です。郁代さんは、人並みはずれた思いやりの持ち主だったのですね。

 

 静子さんは、さらに「郁代はあとに残された親族、婚約者、友人が悲嘆にくれないように、どこどこまでも、励まそうとしていました。見舞われる者と、見舞う者がいつも逆転していました」とも書かれています。心に沁みる言葉ですね。


 本書を読むと、郁代さんの優しい心が自分にまで伝わってくるような気がします。郁代さんは、余命半年を宣告されたとき、お別れの旅をはじめられました。病身にもかかわらず、国内で30人、海外で30人のお友達に会い続けられたそうです。そのことが2007年の日本テレビ系列の「24時間テレビ」で取り上げられました。20分ほどの再現ドラマがオープニングで放映されたのです。

 

 そのとき、日本武道館で秋川雅史さんが「千の風になって」を歌い上げました。大物・秋川雅史の登場は当日まで極秘のサプライズだったとか。「24時間テレビ」はちょうど30回記念であり、力を入れて作られました。静子さんは、"死んだ人"を取り上げた内容が記念番組のオープニングに使われたことに大変驚かれたそうです。「こんなことはありえない!」と思ったそうです。それまでの同番組は、ハンディを持った身体で、前向きに"生きる人"がメインだったからです。

 

 静子さんは、「時代が変わった・・・と私は思いました。テレビ局は勇気があるなあとも。『死』がオープンになったんですからね」とメールに書かれています。そして、すべては、天国の郁代さんの仕業だったと信じておられます。


 若くして亡くなり、世の多くの人たちは郁代さんのことを「かわいそうに」と言いました。しかし、静子さんは最期の時まで命を輝かせて生きた娘を想うにつけ、深い悲しみの中にありながらも、「死は敗北なのだろうか?」と違和感を持ったそうです。

 

 郁代さんの最期の言葉は、「これまで(の人生)、完璧だった・・・」でした。静子さんは、「自分にとって良いことも、嫌なこともあったのに、世界を全肯定したような言葉に聞こえました。死を前にして賜った、命の讃歌でした」と書かれています。


 本書の冒頭には、郁代さんが御両親に当てた以下のメッセージが掲載されています。これを読んで、わたしは涙しました。生前の郁代さんの人柄がよくわかります。わたしは、たとえ34年の生涯だったとしても、心から家族と愛し合うことができた郁代さんと御両親は幸せだったのではないかと思います。


 「おとうさん おかあさんへ」

 

 わがままな娘でごめんね。

 いつもつっけんどんでごめんね。

 口が悪くてごめんね。

 心配ばかりかけてごめんね。

 親孝行できなくてごめんね。

 孫の顔、見せられなくてごめんね。

 おとうさん、おかあさんより先に死んじゃってごめんね。

 34年間という、少し短めの人生だったけど、

 おとうさん おかあさんのおかげで、

 楽しく、充実した、しあわせな人生でした。

 子どものころから、のびのび自由に育ててくれて有り難う。

 わたしを信頼し、やりたいことをやらせてくれて有り難う。

 いつも心配してくれて有り難う。

 わたしのために、泣いてくれて有り難う。

 産んでくれて有り難う。

 おとうさん、おかあさんの子どもとして産まれてこられて、

 わたしはとってもしあわせだったよ。

 本当に有り難う。

         郁 代 (亡くなる1カ月ほど前に書いたと思われる遺書)