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Title

照心語録』

Category

No.0217

 

 『照心語録』安岡正篤著(致知出版社)を再読しました。

 

 数多い安岡正篤の著書の中でも、とびきり面白い1冊です。200本におよぶ安岡正篤の講演テープの中から名言を集めたものです。


 今月25日に40回目の命日を迎えた三島由紀夫は陽明学に心酔していました。その三島の陽明学の師が安岡正篤でした。陽明学とは「知行合一」を旨とする、大石内蔵助や大塩平八郎や吉田松陰らの行動にも強い影響を与えた儒教哲学です。しかし、安岡自身は過激な行動を否定し、かの「2・26事件」にも加担しませんでした。おそらくは、非常にバランス感覚があった人だったのでしょう。

 

 本書には、そんな安岡正篤の人間的魅力を示す言葉が満載です。わたしが特に好きな言葉をいくつか抜書きしてみたいと思います。


 「孔子は多く"敬"を説いたが、孟子は"恥"を力説した。人間は恥ずる心を養いさえすれば、どうにか救われる。だがそれを失うと、人格として致命的な欠陥であることを知らねばならない」

 

 「人間の道において、いかに善を為すかということよりも、いかに善であるかということの方が本質的である。善を為すのは良いことに相違ないが、往々為にする所の手段に堕し易く、それでは道業とは言い難い。善を為すことよりも、自己の実在を善にすることが根本である」

 

 「人生は複雑な矛盾から成り立っている、この限りない矛盾の統一が人生だといってもよい。そして人間の現実生活を根本から動かす功利・成功・時代の風潮という三つの問題も、矛盾そのものであるために、人々は戸惑い、失敗し易い」


 いずれも人間学の根本を押さえた名言ばかりです。そして最後には、次のような言葉が出てきます。

 

 「人類滅亡後、何が地球を支配するかという議論の起こったことがある。猫だという説がある。生物は文明化すると文弱になって滅ぶが、猫だけはいくら優生学的に手を加えても二代三代になるとヒョイともとの原種にもどってしまい、決していわゆる文明族にならない。だから残るだろうというのだが、実に面白い話だと思う」

 

 これほど安岡正篤という人の思想の柔らかさ、好奇心、スケールの大きさを示す言葉はないと思います。わたしの一番好きな言葉です。

 

 まだ本書を読まれていない方は、ぜひ、お読み下さい。