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単身急増社会の衝撃』

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No.0190

 

 単身急増社会の衝撃』藤森克彦著(日本経済新聞出版社)を読みました。

 

 著者は、みずほ情報総研の主席研究員です。専門分野は、社会保障政策・労働政策だそうです。


 「単身急増社会」というのは、あまり聞き慣れない言葉です。でも、「無縁社会」に直結する社会であることは間違いないようですね。

 

 帯には「無縁社会の実像に迫る!」のキャッチコピーが大きく踊り、続いて「男女・年齢・地域別に徹底分析」「もはや『孤独死』は他人事ではない」と書かれています。本書には、とにかく多くの数字データやグラフなどが収められています。さしずめ「無縁社会を考えるためのデータブック」という印象を持ちました。


 本書の「はじめに」冒頭には、次のように書かれています。

 

 「50代・60代男性の概ね4人に1人が一人暮らしとなる―。これは、現在の結婚や世帯形成の傾向が続いた場合に予想される『2030年の日本の姿』だ。これまで夫と死別した一人暮らし(単身世帯)の高齢女性の増加に注目が集まってきたが、今後は中高年男性でも一人暮らしの増加が顕著になっていく。一人暮らしは、中高年以降の男性の問題でもある」

 

 なぜ、単身世帯は増加するのでしょうか。著者によれば、高齢者で単身世帯が増えたのは、長寿化による高齢者人口の増加と、結婚をした子供が老親と同居しなくなったことが大きな要因だそうです。

 

 しかし、50代と60代男性で単身世帯が増加したのは他にも大きな要因があります。すなわち、未婚者の増加です。50歳の時点で一度も結婚をしたことのない人の割合を「生涯未婚率」と呼びます。男性の生涯未婚率を見ると、1920年から85年までは1~3%台で推移していますが、90年には6%になり、05年には16%にまでなりました。

 

 かつての日本では、50歳の未婚男性というのはごく少数派でした。しかし、現在では50歳男性の6人に1人は未婚者となっています。さらに2030年になると、男性の生涯未婚率は29%、女性は23%になると予想されています。


 90年代以降の結婚や世帯形成における大きな変化を生んだ背景とは何か。著者は、次のように述べています。

 

 「単身世帯の増加の背景には、女性の経済力が向上したため結婚しなくても生活していける女性が増えたこともあげられる。さらに、社会的インフラが整備されてきたので、以前よりも一人暮らしから生じる不自由さは減少している。料理は苦手でも、コンビニエンス・ストアに行けば弁当がある。人と会わなくても、携帯電話で気軽に話ができる。一人の時間を楽しむためのゲームソフトも豊富だ。少なくとも健康で働いているうちは一人暮らしにたいした不自由はない」


 しかし、快適な一人暮らしには、当然ながらデメリットもあります。いざというときに支えてくれる同居家族がいなということは、たとえば病気や要介護状態に陥った場合などを考えた場合、非常にリスクが高いのです。失業したり、病気や怪我などで働けなくなった場合も、結婚していれば、一方の配偶者が働いてやりくりすることも可能ですが、一人暮らしではそれも不可能です。

 

 さらには、他者との交流が乏しければ、社会的に孤立するというリスクがあります。そして、その先に待っているのは、死亡後気づかれずに長期間にわたって放置されること、すなわち「孤独死」です。

 

 2009年に内閣府が60歳以上の高齢者を対象に実施した調査によれば、単身世帯の65%が「孤独死を身近な問題」と感じているそうです。この数字は、夫婦二人世帯の44%、三世代世帯の30%に比べて高い割合にあるとか。


 家族が多ければ多いほど、老後は安心というわけでしょうか。でも、これからは家族がいない単身世帯が急増することが確実なのです。また、日本の社会保障制度が国際的にみて安上がりの制度となっているのは、家族による助け合いを前提にしてきたためだそうです。このままで日本の社会保障制度は大丈夫なのでしょうか。著者は、次のように述べます。

 

 「単身世帯が増加する中では、社会保障を拡充して一人暮らしの人でも安心して生活できる社会を構築していく必要がある。これは家族を軽視することではない。なぜなら、現在家族と暮らしている人も含めて、誰もが一人暮らしになる可能性を抱えているからだ」

 

 著者は、現在単身世帯でない人を含めて、わたしたちの暮らしを守るためには「公的なセーフティネットの拡充」と「地域コミュニティのつながりの強化」が必要だと訴えます。


 単身世帯が増加する中で、当然ながら助け合う社会というものが求められます。本書では、人間社会の助け合いには、大きく言って「自助」「共助」「公助」「互助」の4つの種類があるとしています。(ちなみに、わたしは「自助」「互助」「扶助」の3つに分類しています。)

 

 著者によれば、4つの種類とは次のような内容です。

 

 「自助」とは、自ら収入を得て、自らの力で貯蓄をしたり、私的年金に加入したりしながら、リスクに備えていくこと。家族内の助け合いも一般的に「自助」に含められます。

 

 「共助」とは、年金保険、医療保険、介護保険など社会保険を代表とし、「社会連帯」の精神のもとで負担能力に応じて保険料を出し、必要に応じて給付を受けるものです。

 

 「公助」とは、自助・共助・互助では対応できない困窮状況などに対して、所得や資産などの受給条件を定めた上で必要な生活保障を行うこと。典型は、生活保護制度です。

 

 そして「互助」とは、インフォーマルな相互扶助のことで、友人や近隣による助け合い、ボランティア、NPO(非営利法人)の活動などが含まれます。

 

 単身世帯は同居家族による助け合いが期待できないため、この4つの助け合いを再構築していく必要があるというのです。この4つの助け合いの中でも、わたしが最も関心があるのは、当然ながら「互助」です。なぜなら、わたしは互助会の経営者であり、NPO法人の役員でもあるからです。

 

 「互助」の問題は、「地域コミュニティーとのつながり」という問題に直結しています。退職した多くの単身者にとって、地域コミュニティーこそが「社会とつながる場」になるからです。それと同時に、公的サービスでは付与されない支援を地域コミュニティーから受けられる可能性があるからです。

 

 では、地域コミュニティーを強化するには、どうすべきか。本書には、次のような3つの具体的事例が紹介されています。

 

 ①自治体による地域交流の場づくり

 

 ②NPOが拠点となった地域コミュニティーの助け合い

 

 ③高齢者の多い団地やマンションにおける取り組み

 

 著者は、このような活動を各地域において広げていくために、行政は、資金面、経営ノウハウの提供、人的ネットワークの構築支援などを行う必要があると主張します。


 また著者は、地域コミュニティーの活動に単身者が参加することは難しいとして、次のように述べています。

 

 「これまで日本の地域コミュニティーは、町内会やPTAなどが中心になって発展してきた。これら団体の活動は引き続き重要であるが、PTA活動などは、子供を通じて近隣者が交流していくので、子供をもたない単身世帯は参加できないという問題がある。単身世帯を包み込むコミュニティーの強化策を検討していくことが重要になろう」

 

 わたしは、著者のこの発言を読んで、単身世帯を包み込むコミュニティーの強化策とは、「隣人祭り」に他ならないと思いました。これまで日本における「互助」の精神は、互助会や各種のNPOなどを生んできました。しかし、ここまで単身世帯が増加してしまった今、それらだけでは現在のコミュニティーを維持し、今後のコミュニティーを強化することはできません。

 

 隣人祭りこそは、21世紀型の新しい「互助」のイノベーションでないでしょうか。わたしは本書を読み終え、あらためて隣人祭りの重要性を再認識しました。