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140字でつぶやく哲学』

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No.0200

 

 わたしが監修した『140字でつぶやく哲学』(中経の文庫)が刊行されました。

 

 140字とは、もちろんツイッターを意識していますが、じつは哲学を知るのに最適の字数だと思います。ずばり、読みやすいし、語りやすいからです。それから、哲学に必要な対話にも向いています。「つぶやき」という行為そのものが、哲学の本質に関わっていると言えるでしょう。


 本書には、哲学者37人と、世界の宗教、日本の近代思想家など19人が登場します。また、従来の哲学ガイドのように、古代ギリシャからスタートするのではなく、逆に現代の哲学者から始まって、古代の哲学者にさかのぼってゆくという「逆さま」スタイルを採用しました。このため、現代の身近な問題から哲学に触れて、そのうち自然に根源的なテーマについて学ぶことができます。

 

 古今東西の哲学者のつぶやきに触れるのは、とても刺激的だと思います。世界中の思想に触れて、あなたも、哲学対話を楽しんでいただきたいと思います。


 「なぜ、一条さんが哲学の本を監修するの?」と何人かの方から質問されました。わたしは「哲学ほどおもしろいものはない」と思っているのですが、大多数の人は本気にしません。それほど、哲学は難解で無用の長物と見なす考え方が世の中では一般化しています。しかし他方で、哲学を求める人々が後を絶たないのも、また事実です。

 

 特に経営者の多くは「哲学」とか「フィロソフィー」という言葉を語りはじめています。ドラッカーなどが、21世紀の社会は知識集約型社会であり、そこでは知識産業が主役になると主張しています。知識集約型社会において、企業が「売るもの」は、知識ワーカーとしての社員に体現された組織の知識や能力、製品やサービスに埋め込まれた知識、顧客の問題を解決するための体系的知識だとされています。

 

 顧客は、提供された知識とサービスの価値に対して評価し、支払うことになるのです。一方、企業が質の高い知を創造するのは、事業を高い次元から眺めること、知とは何かを問うこと、つまり哲学が求められます。それは「志の高さ」にもつながるもので、当然トップの課題でもあります。マーケットはそこまでみて企業を評価するようになるといわれています。ビジョンやミッションはもちろん、フィロソフィーまで求められるのが21世紀の企業像なのです。


 さて、一般に哲学の祖はソクラテスだとされています。ソクラテスは「哲学とは死の学び」と語り、その弟子であるプラトンは「死」についての哲学的思考を大著『国家』のなかの「エルの物語」にまとめています。

 

 なぜ、「哲学」と「死」の問題が分かちがたく結びついているのでしょうか。現代日本を代表する哲学者の中村雄二郎氏によれば、哲学をする上にまずもって大事なことは、経験上でも書物のうえでも、積極的に色々なことと出会って、未知なものやそれまで気づかなかったことを新鮮に受け取り驚くという、好奇心を持ちつづけることであるといいます。したがって「哲学は好奇心である」と言えます。


 哲学は好奇心であり、知ることへの情熱でもあるならば、そのまなざしは当然ながら「謎」や「不思議」というものに向かいます。

 

 アニメ映画「千と千尋の神隠し」の主題歌にも出てくるように、生きている不思議、死んでいく不思議・・・・・この世は不思議に満ちています。まったく赤の他人の男女が知り合って、恋をして、結婚するというのも、考えてみれば実に不思議な話です。

 

 でも、人類にとって最大の謎はやはり「死」であるといえます。なぜなら、宇宙と自然の中における人間の位置、人生の意味を考える哲学的思考にとって「死」だけはどうしてもうまくはまらないパズルの最後の一片、トランプのジョーカーのような存在だからです。

 

 「メメント・モリ(死を想え)」という言葉がありますが、葬儀の時間こそは死を想う時間であるといえるでしょう。セレモニーホールとは死を想う場所なのです。ここにきて、ようやく「哲学とは死の学び」という言葉の意味がわかってきます。

 

 哲学とは、牢獄としての肉体を超えて精神を純化させること。哲学の道とは意識的に死ぬ道であり、そこで人々は「死想家」となる。ならば葬祭業者とは葬儀参列のお客様に対して、哲学的な空間と時間を提供しているのかもしれません。

 

 ぜひ、世界一やさしい哲学の本をご一読下さい!