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あの素晴らしい曲をもう一度』

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No.0107

 

 あの素晴しい曲をもう一度』富澤一誠著(新潮新書)を読みました。「フォークからJポップまで」というサブタイトルがついています。

 

 著者は、日本を代表する音楽評論家で、専門はジャパニーズ・ポップスです。本書は、40年にわたって間近に見つめてきたJポップの歴史をまとめたものです。


 本書のタイトルは、永遠の名曲「あの素晴らしい愛をもう一度」を意識しています。というより、本書は2009年10月に亡くなった加藤和彦へのオマージュ的な本だと言えるでしょう。著者は「はじめに」で、次のように述べます。

 

 「加藤和彦の特徴は、私たち聴き手だけでなく、作り手を刺激する才能があったことです。フォークを聞いた大分県の高校生、南こうせつは、『俺も出来るんじゃないか』と奮起します。そして後に『かぐや姫』を結成することになるのはその一例です」


 本書を読んで、日本の音楽シーンの見晴らしが非常に良くなりました。アメリカのフォーク・ミュージックがどのように日本に流入してきたのか。そのとき、どんなヒットソングが日本の若者たちの心を捕らえたのか。また、それがどういうプロセスを経て、ニューミュージックとして花開いたのか。さらには、それがどのように現在のヒットソングに繋がっているのか。

 

 著者は、10年毎に日本の音楽シーンを振り返り、それぞれの時代にキャッチコピーを次のようにつけています。

 

 1960年代~フォークが日本を揺さぶった

 1970年代~ニューミュージック黄金時代

 1980年代~歌謡曲の逆転勝ちとビートの浮上

 1990年代~メガヒット方程式の確立

 2000年代~音楽界の迷走と新たな「名曲」


 その40年の歩みの中で、日本音楽史のキーパーソンやキーグループが登場します。

 たとえば、60年代の加山雄三、ザ・フォーククルセダーズ、岡林信康。

 70年代の吉田拓郎、井上陽水、南こうせつとかぐや姫、ユーミン、中島みゆき、アリス、矢沢永吉、ゴダイゴ、松山千春。

 80年代のオフコース、チューリップ、YMO、佐野元春、サザンオールスターズ。

 90年代のドリカム、尾崎豊、B'z、小室哲哉、宇多田ヒカル、MISIA。

 00年代の浜崎あゆみ、秋川雅史。

 

 それぞれに新しい部分があり、それぞれの革命がありました。そして、それぞれの時代に、それぞれの名曲がありました。著者は、本書の「はじめに」で次のように述べています。

 

 「世代を超えて支持され、大ヒットする曲にはひとつ共通していることがあります。それは聴き手に『これは俺(私)のことを歌っているんじゃないか』と思わせることです。その言い方や景色が、『おらは死んじまっただ』なのか、『さみしさだけを手紙につめて ふるさとにすむあなたに送る』なのか、『DA.YO.NE』なのか、『そこに私はいません 眠ってなんかいません』なのか―歌い手と聴き手が置かれている時代によって違ってくるということでしょう」


 そして、2004年の年頭から、著者は今後のミュージック・シーンのキーワードを「歌力(うたぢから)」であるとしています。歌力のあるなしは、大人が聴ける歌かどうかということ。それは、

 

 たとえば比較的高年齢の歌手の歌ということではなく、たとえば、デビュー曲「Jupiter」が70万枚を超える大ヒットになった平原綾香などにも歌力があるというのです。著者によれば、いくらタイアップなどの手法が盛んになっても、本当に良い歌はそんなことには関係ないといいます。曲の力、歌力によって人々の間に浸透していくことができるというのです。その証拠として、森山直太朗の「さくら(独唱)」や夏川りみの「涙そうそう」などを挙げ、著者は次のように述べます。

 

 「この『歌もの』への志向は強くなる一方だと私は考えています。これまでにビートもの、ダンスものが流行り、R&B、ヒップホップなどあらゆるものが出て来て、もう出尽くしたという感じです。その次は、新しさではなく原点でした。つまり、ちゃんと歌を聴きたいという欲求が生れてきたのです」

 

 そして、今こそ「家族」の歌が必要であるとし、すぎもとまさと「吾亦紅」、中村ブン「かあさんの下駄」の2曲を紹介して、本書を締めくくっています。たしかに、「家族」の歌が必要な時代かもしれませんね。最近の植村花菜「トイレの神様」、樋口了一「手紙」、パパ荒川「こどもたちへ」など、みな家族を歌った名曲だと気づきました。