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Googleの正体』

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No.0117

 

 

 Googleの正体』牧野武文著(マイコミ新書)を読みました。

 

 グーグルについては、すでに『グーグル秘録』という本を取り上げました。本書は、それを補完するような内容でした。

 

 グーグルは無料で検索することができます。しかし、グーグルの売り上げは2兆円もあります。これは日本のテレビ広告費(約1兆9000億円)を超える金額で、日本のインターネット広告費の全部を足した3倍弱という数字です。これをグーグルは1社で稼ぎ出しているわけですから、すごいですね。

 

 その2兆円という収入の源泉は、アドワーズ広告と呼ばれる3行広告です。グーグルで検索したとき、上部と右袖にテキストの3行広告が表示されます。これを利用者がクリックすると、広告主のサイトが見られる仕組みです。すると、広告主からグーグルに数十セントから1ドルほどの広告費が支払われます。

 

 他にもブログやサイトに出すアドセンス広告などもありますが、ほとんどの収入はこのアドワーズ広告から得ているのです。著者は、次のように述べます。

 

 「世間ではグーグルの長所を語るときに、まっさきに『高い検索技術』をあげる。それは間違いではないが、もうひとつ『アドワーズ広告』をあげるべきで、このふたつがグーグルの根幹にあると考えない限り、グーグルを理解することはできない」


 さて、アドワーズ広告によって膨大な収入を得て、グーグルは何をしてきたか。グーグルアースを開発したり、YouTubeを買収したりしました。それらは黒字化が見込めない事業です。いわば慈善事業と呼ばれても仕方のないものなのです。

 

 なぜ、グーグルは慈善事業ばかりに取り組むのでしょうか。その謎は、創設者であるラリーとサーベイの趣味嗜好にあると著者はとらえ、次のように述べます。

 

 「グーグルが次々と発表する新たなサービスは、子供のおもちゃ箱をぶちまけたような夢のあるものが多い。地球のすべてを観察できるグーグルアース、自分が街中を散歩する気分になれるストリートビュー、世界中の本が読めるグーグルブック検索、さらには音声やカメラで検索ができるアンドロイド携帯電話。そして、クロムOS。どれもがSF小説に出てくるアイテムのようで、ラリーとサーゲイは小さな頃に屋根裏部屋で読みふけった小説に出てくるアイテムを実現しているかのように見える」

 

 この著者の指摘は、グーグルの精神なるものを見事に言い当てているように思います。グーグルの会社概要の冒頭には、次の有名な言葉が書かれています。

 

 「Googleの使命は、世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすることです」

 

 著者は、グーグルが次々に発表する新しいサービスについて、「世界中の情報を整理する」技術か、「世界中の人々がアクセスできて使えるようにする」技術かのいずれかであると分析し、次のように述べています。

 

 「グーグルアースは衛星写真をどのように整理すればいいかという見本だし、ストリートビューは街の風景写真をどのように整理すればいいかという見本だし、グーグルブック検索は書籍をどのように整理すればいいかという見本だ。アンドロイド携帯電話やクロムOSはその整理した情報を世界中の人々がアクセスできて使えるようにするための技術だ」


 そして、さらにグーグルが成長するための戦略とは?

 現在、世界の人口は約67億人です。でも、インターネットにアクセスできる人口は19億人程度だそうです。つまり、全人類の3.5人に1人しかインターネットを使っていないわけです。あとの2.5人は、インターネットを見たこともない人々。あるいは街に出てインターネットカフェで見なければならない人々。

 

 いずれにせよ、これら「残りの2.5人」にどうやってグーグルを使ってもらうかを考えなければなりません。そのための戦略も、色々と練られているといいます。それにしても、スケールの大きな話ですねぇ。


 グーグルの前に立ちふさがる大きな問題として「プライバシー」の扱いがあります。グーグルは次のような理念を掲げています。

 

 「ユーザーに焦点を絞れば、他のものはみな後からついてくる」

 

 この理念があるために、グーグルの企業姿勢には「許可」というものを軽視する傾向があります。これは非常に危険なことだと思います。

 

 そもそも、ユーザーにとって何がいいことなのかを決めるのはグーグルなのでしょうか。著者も書いているように、実際のユーザーの気持ちとグーグルの考え方は完全に一致しているわけではないのです。

 

 著者は、プライバシー問題の一例として、ストリートビューを取り上げます。

 これは2007年にグーグルが始めたサービスで、グーグルマップやグーグルアースなどの地図サービス上で、道路をクリックすると、周辺の風景を360度パノラマで見ることができるというものです。グーグルカーと呼ばれるカメラを搭載した車が実際に各国の主要都市などをくまなく走って撮影したといいますこのサービスが、公開当初からプライバシーの侵害について議論されました。著者は次のように書いています。

 

 「ストリートビューは実際の映像を撮影するため、街中でキスをする恋人たちや、ラブホテルに入ろうとするカップル、風俗店から出てきたばかりの男性、水着姿で日光浴をする女性などが映りこんでおり、それが個人のブログなどで取り上げられた。また、ストリートビューの写真では、人の顔と自動車のナンバープレートに自動的にぼかしが入る仕組みになっているが、それでも近所の人なら人物の推定がじゅうぶん可能なケースがあったことも問題視された」


 さらに、大問題となったのが、このプライバシー問題に対するグーグル側の発言でした。米国ペンシルバニア州の市民が、自宅の敷地内が映っていたため、プライバシーの侵害を訴え、民事訴訟を起こしました。

 

 ところが、この裁判において、グーグル側の代理人は「現代には完全なプライバシーなど存在しない」と発言したのです。その後は、自分や自宅が映っていて公開したくないなどの苦情を申し立てると、その部分の写真を削除するという対応策を打ち出しました。

 

 しかし、この対応策にしても、「勝手に撮影されて、自分がストリートビューに映っていないかどうかを、自分の行きそうな地域をすべてチェックし、削除要求という手間を、なぜかけなければならないのか」という疑問の声もあがっているそうです。

 

 わたし個人も、自分の小学生の娘の通学風景などを勝手に写真に撮影される可能性もあるわけです。そして、それを見た人物が悪用して、誘拐や性犯罪などの資料に使われる可能性もあることを考えれば、なんだか薄ら寒い思いがしてきます。


 「子どものおもちゃ箱をぶちまけたような夢」を追求し、「SF小説に出てくるアイテム」を欲しがる人々によって創設されたグーグルという組織は、まだまだ世界中を騒がせてくれそうです。本書を読んで、Googleの正体が少しわかってきたような気がしました。