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フリーメイソン』

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No.0071

 

 フリーメイソン』荒俣宏著(角川ワンテーマ新書)を読みました。「『秘密』を抱えた謎の結社」というサブタイトルがついています。

 

 同じ角川書店から『ロスト・シンボル』という小説が刊行されています。世界的ベストセラーとなった『天使と悪魔』『ダ・ヴィンチ・コード』に続くダン・ブラウンの最新作ですが、今回は「フリーメイソン」がテーマです。

 

 荒俣さんの本は『ロスト・シンボル』を読み解くためのガイドブック的要素もありますが、全体としては非常に良く書かれたフリーメイソン入門でした。本書を読んで、これまで引っかかっていた多くの謎が解けました。


 じつは、鎌田東二さんと交わしている「ムーンサルトレター」を読んでおられる方はご存知かと思いますが、わたしは昨年の10月頃、「フリーメイソン」をテーマにした本を書こうと考えていました。ちょうど、鳩山由紀夫首相が「友愛」を唱えていた頃です。そのため、フリーメイソン関係の資料も数十冊読みましたし、執筆メモの作成もしていました。その後、いろいろと多忙になったり、ひょんなことから『葬式は必要!』(双葉新書)を書き下ろしたりと、予定が大幅に変更されました。もし、『葬式は必要!』を書いていなかったら、今頃はもうフリーメイソンの本を上梓していたと思います。

 

 でも、書かなくて良かったと心から思います。荒俣宏さんが書くのなら、これ以上の適任者はありませんから。わたしは、かの澁澤龍彦亡き後、「最大の神秘学通」としての荒俣さんをリスペクトしています。荒俣さんの著書は、小説に至るまですべて読破しています。

 

 以前、『BRUTUS』に連載されていた「ビジネス裏極意」の取材で実家を訪れられたことがあり、そのとき、わたしが持っていた著書にすべてサインしていただきました。荒俣さんは、父とわたしの親子について、著書『ビジネス裏極意』(マガジンハウス)および、『商神の教え』(集英社文庫)に書いて下さいました。

 

 今でも、わたしの書斎には「荒俣宏コーナー」があります。荒俣さんが「最大の神秘学通」としての本領を最大に発揮したのは、『世界神秘学事典』(平河出版社)と『神秘学カタログ』(河出書房新社)の2冊でしょう。この2冊ほど、古今東西のオカルティズムや神秘学を体系的に紹介した本はありませんでしたが、奇しくも2冊とも鎌田東二さんとのコラボでした。


 荒俣さんが書いたからという理由以外に、フリーメイソンの本を書かなくて良かったという理由がもう一つあります。それは、いくら調べても、やはりフリーメイソンは世界支配を企む秘密結社などではなく、単なる友愛団体にすぎないということが判明したからです。

 

 フリーメイソンはユダヤの陰謀集団ではありませんし、坂本龍馬も鳩山由紀夫もフリーメイソンに操られたという事実はありません。関わりが深いとされていたフランス革命やアメリカ独立革命さえ、厳密にはフリーメイソンが仕掛けたものではないという事実が本書で明らかになります。世界中で革命と戦争を仕掛けてきたとかいった負のイメージがあるのも、何よりもフリーメイソンの正体がよくわからないからということに尽きるのではないでしょうか。その徹底した秘密性が、あらぬ誤解を生んでいくのです。

 

 荒俣さんは、本書の「まえがき」を「フリーメイソンについてかたられる噂ばなしは、都市伝説にちかい」と題して、次のように書いています。

 

 「フリーメイソンは陰謀集団ではなく、ただ、結社内に口外無用の『企業秘密』を抱えている集団といえる。ある意味では一般的な友愛団体、社交クラブ、同志会ともいえるのだが、会員になって一定の儀礼を受けないと明かしてもらえない『秘密』があることが、ほかのクラブと異なるのだ」

 

 そう、フリーメイソンとは、基本的には、わたしも所属していたロータリークラブやライオンズクラブなどと同じ友愛団体なのです。ただ、それらの団体と区別される「秘密」とは何か。荒俣さんは、述べます。

 

 「その秘密とは、たぶん、古代から伝えられてきた『神聖な知識』、不明確で不正確な人間の言葉を通じてでは『そのメッセージ内容をほんのちょっとしか伝えられない』壮大な知識、とでもいうものだろう。人間の言語で言い尽くせない知識であるから、寓意絵やシンボルや暗号を用いて、それを記録し、後進に伝える必要が出てくるのだ」


 そう、フリーメイソンの最大のキーワードは「儀式」です。フリーメイソンの儀礼には、さまざまな古代儀礼の伝統が流れています。

 

 古代ギリシャの「ディオニュソスの秘儀」、古代ローマの「バッコスの秘儀」なども深く関わっていますが、何と言っても古代エジプトの「イシスの密儀」の存在を忘れることはできません。叡智の神イシスの夫であるオシリスが殺され、死体をバラバラにされたのち、その死体がすべて回収されて蘇るという物語を再現すること。このイシスとオシリスの物語の再現儀礼こそ、フリーメイソンの儀礼中でも最高儀礼になっているのです。イシスとオシリスの物語は、あのエジプトのミイラづくりを生んだ神話でもあります。

 

 死者の復活の物語は、自然界のサイクルをも意味しているのです。荒俣さんは、次のように述べます。

 

 「春に生まれて冬に死に、また春になって復活するという自然のサイクル、またナイル川でいえば、川が氾濫することで農業ができるようになり、また作物が実った後、川はまた退き、死の世界になり、また乾季が終わって雨季になると雨がやってきて植物が生える。まさにバラバラになったオシリスの神話が、自然界にも繰り返されているという寓話になったわけである。この寓話を再現するためにあのミイラづくりというものが始まったわけである。以上の神秘劇に対し、実際にミイラをつくるのではなく精神の側でこの偉大な秘儀を再生しようとしたのが、近代フリーメイソンの最高位儀式だといえるのではないだろうか」

 

 わたしたち日本人が行う結婚式や葬式でも同じですが、儀礼とは象徴を操り、魂をコントロールする技術なのです。フリーメイソンの正体とは、まさに儀礼によって「シンボル」を操るグループであったと言えるでしょう。


 さて、アメリカの1ドル紙幣にピラミッドが印刷されていることからも分かるように、フリーメイソンの人々は古代エジプトに憧れていました。本書で興味深かったのは、このエジプトへの憧れをフリーメイソンの儀式に取り入れたのは、かの「カリオストロ伯爵」であったことです。錬金術師であり、稀代の詐欺師として知られた人物ですが、1740年頃に古代エジプトの秘儀をフリーメイソンに導入して大金持ち相手に行い、非常に儲けたそうです。その儀礼というのが男女が裸になって、裸の男が裸の女にエジプト古代に語られた主宰者だけの秘密を告白するというエロティックなものでした。


 このエジプト式儀礼は大流行して、モーツァルトにオペラ「魔笛」を書かせる原動力になったともされています。そのカリオストロが導入したというエロティック儀礼が、映画「アイズ・ワイド・シャット」に出てくる秘密集会にそっくりなのです。

 

 「アイズ・ワイド・シャット」は、ユダヤ人の血を引く映画作家スタンリー・キューブリックの遺作で、1999年の作品です。その中の妖しくエロティックな秘密パーティーの描写がフリーメイソンの集会および儀礼そのものであるという噂が広まりました。また、この映画が完成した直後にキューブリックが亡くなったわけですが、秘密を暴露した罰を受けたのだというのです。それは、モーツァルトが「魔笛」でフリーメイソン儀礼の真相を部分的に公開したために変死したのと同じであるとさえ言われました。


 キューブリックは、いろいろと噂の多い人物で、アポロが月面着陸した映像はキューブリックがハリウッドのスタジオで撮影したものだなどとも言われています。それも映画「2001年宇宙の旅」を撮影した20世紀フォックスのスタジオというのです!

 

 「2001年宇宙の旅」といえば、月面にモノリスという石碑が立ち、これが人類の進化をコントロールしていくという物語でした。どうしても、石工の集団を起源とするフリーメイソンを連想してしまいますね。ちなみに、アポロの宇宙飛行士であったエドガー・ミッチェルはフリーメイソンの会員で、実際に三角定規とコンパスが描かれたフリーメイソンの旗を月面に翻らせました。

 

 これは都市伝説ではなく、正真正銘の事実です。ミッチェルは、後に超能力研究の道に進み、「純粋知性科学」というコンセプトを打ち出します。それはダン・ブラウンの『ロスト・シンボル』の中でも最も重要な位置を占め、荒俣さんも多大な関心を示しています。

 

 荒俣さんによれば、「純粋知性科学」とは「新しい研究分野」であり、その目的は「人間の意識や意思、また知性や理性といった精神的活動の力が、外部の物質界にも影響を及ぼすかどうかを確かめること」であり、その研究は「目に見えず測定もできない思念や知性といったものを解明するところまで拡大されつつある」そうです。そして、文字においては暗号、絵においては象徴図像学が、今後ますます重要になるというのです。こうなると、やっぱり、フリーメイソンを単なる友愛団体で済ますわけにはいかなくなりますね。本書のサブタイトルのように、「秘密」を抱えた謎の結社と呼ぶしかありません。


 わたしは、もともとフリーメイソンには深い興味を抱いていました。なにしろ、本を1冊書き下ろそうとしたぐらいですから。フリーメイソンは「普遍思想」とか「超宗教」とか、どうも、これまで、わたしが考えてきたことを先取りしているような気がしてなりません。

 

 もともと父が始めた互助会の「相互扶助」の理念は「友愛」に通じますし、「隣人祭り」も「月面聖塔」も、すべてフリーメイソンの理想と合致します。フリーメイソンはもともと石工組合ですが、神殿や聖堂づくりが元来の目的であったことから、塔の建設などを大いに好むそうです。

 

 また、月を平和のシンボルとする点も同じで、アポロが月の石を持ち帰ったとき、そのほとんどをフリーメイソンの会員たちが求めたとか。ずばり、月面で月の石を使って塔をつくる、このプランは彼らのテイストに100%マッチするのです!しかも、そこには「普遍思想」「超宗教」「人類共存」などのテーマも込められているわけですから。

 

 わたしたちは、月を地球人類の魂の故郷だと考えています。ならば、一つの地球に一つの故郷。ぜひ、彼らとともに友愛社会=ハートフル・ソサエティの実現に邁進したいです。

 

 古代への憧憬、普遍の追及、そして全体性への希求・・・こうしてみると、「フリーメイソン」とは「ロマン主義」の別名に他ならないことがわかります。まさに、わたしにピッタリじゃありませんか!

 

 ということで、東京はお台場の「ヴィーナス・フォート」にあるフリーメイソン関連商品を主に扱う骨董店「Strange Love」に時々寄っては、懐中時計だの小物入れだのバッジだのベルトのバックルだの、フリーメイソン・グッズを買い求めるわたしでした。