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LOVE LETTERS』

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No.0081

 

 LOVE LETTERS 偉人たちのラブレター』ウルスラ・ドイル著、田内志文訳(青山出版社)を読みました。

 

 わたしの誕生日に、ある読者の方からプレゼントされた本です。「偉人たちのラブレター」というサブタイトルの通り、ここに紹介されているのは世界史に名を残す偉大な人々のラブレターばかりです。

 

 なんでも、女性に人気のある「SEX&THE CITY」という映画に出てくる本とか。映画の中で、キャリーという女性が恋人のミスター・ビッグに読み聞かせ、二人の関係に大きく関わった本なのだそうです。

 

 つまり、もともとは架空の本だったわけです。しかし、この映画を観た女性たちの強い要望で現実の書籍として出版されました。アメリカをはじめ、日本を含む9ヵ国で出版され、世界中で大反響を呼びました。

 

 さて本書には、15世紀の終わりから20世紀の初めまで、さまざまな欧米の有名人が書いた40通余りのラブレターが紹介されています。たとえば、このようなラブレターです。

 

 ネルソン卿からハミルトン夫人へ。

 

 ナポレオンから妻ジョセフィーヌへ。

 

 モーツァルトから奔放なコンスタンツェへ。

 

 ベートーヴェンから彼の"不滅の恋人"へ。

 

 シューマンからクララへ。

 

 フローベールからジョルジュ・サンドへ。

 

 そして、ピエール・キューリーからマリー・キューリーへ。

 

 時を越えて愛の物語がよみがえります。でも、作家や詩人の綴ったラブレターは、やはり情熱が読む者にまで伝わってきます。たとえば、次はフランスの文豪バルザックがエヴェリナ・ハンスカ伯爵夫人に宛てた手紙の一部です。

 

 「ああ!あなたの足下にひざまづき頭を膝の上に休ませ、美しい夢を見て、気怠さのうちに私の考えを話し聞かせ、喜びを感じ、時にはひとことも口にせず、しかしこの唇をあなたのガウンに押し当てながら過ごす半日が、どれほど愛おしいことでしょう!・・・・・愛するエヴァ、最愛の1日、最愛の夜、私の希望、敬愛するあなた、永遠に愛するあなた、唯一の恋人、いったいいつ会えるでしょうか?すべては幻なのでしょうか?私はあなたに本当に会ったことがあるのでしょうか?」

 

 エヴェリナ・ハンスカ伯爵夫人は20歳年上のポーランド人地主の夫がいましたが、バルザックと17年にわたり文通します。彼女の夫が他界すると2人はヨーロッパ各地を旅行して回るようになり、9年後にようやく結婚。しかし、そのわずか半年後にバルザックは死去したのでした。

 

 また、同じくフランスの文豪であるユーゴーが幼なじみのアデーレと恋に落ち、彼女に宛てたラブレターも情熱的です。一部を紹介します。

 

 「愛するアデール、君からすこし言葉をかけてもらっただけで、僕の心模様は変わってしまう。そう、君は僕となんだってできる。明日の朝、もし君のその優しい声と、優しく押しつけられる愛らしい唇の感触が僕の肉体に命を呼び起こしてくれなければ、僕は死んでしまうにちがいない。昨日とは違うこの気持ちのまま、今日は眠りに就くとしよう!アデール、昨日の僕は君の愛をもう信じられないような気持ちになっていた。もういつでも死んでしまっていいような、そんな気分だったんだ」

 

 この手紙を書いた2年後、ユーゴーとアデールは親たちの反対を押し切って晴れて結婚します。そして5人の子どもを授かりますが、いつまでもその愛は続きませんでした。2人とも、それぞれ別の恋人に出会い、別れてしまうのでした。まことに、愛とははかないものですね。

 

 わたしが最も心を打たれたのは、イギリスが誇るロマン派詩人ジョン・キーツが婚約者のファニー・ブローンへ宛てた次のラブレターです。

 

 「この世で君自身の存在を除き、君の手紙以上に僕に喜びを与えてくれるものはありません。実際、1通でも欠ければこんなにも僕のものの感じ方を変えてしまうのかと、驚かされてばかりです。君のことを考えないときでさえ、その優しさと、もっと優しい君の本質に包まれているのを感じます。僕の思いすべて、そしてこの不幸な昼と夜とに、僕はまだ自分の愛が癒えておらぬことに気づかされるばかりでなく、君が僕とともにいないことをあまりにも強く感じられてしまうのです。味気なくじっと我慢しながら呼吸をするこの様は、命などと呼ぶことはできません。君が感じさせてくれるこのような愛を、以前の僕はまったく知りませんでした。そんなものがあるとは信じていなかったのです。僕が焼き尽くされてしまうことを、この空想力が恐れていたのです。しかしもし君がじゅうぶん僕を愛してくれるのであれば、多少の炎など、喜びでしめったり濡れたりしたように耐えてしまえるでしょう。」

 

 誰でも、恋に落ちた頃は、キーツのような気持ちになるかもしれません。そして、こんな情熱的なラブレターを書いてみたいと思うかもしれません。でも、実際にこんな手紙を書く人も、また書ける人もなかなかいませんね。やはり、ロマン派詩人の愛の表現力というのは凄いの一言です。

 

また、キーツはファニーに宛てた別のラブレターの最後を次のように締めくくっています。

 

 「君なしでは、僕は生きていけません。ただの君ではなく、汚れなき、貞淑な君です。陽は昇り、沈み、日々は過ぎ去り、君は適当にやりたいようにやりながら、僕がその日にどんな惨めな気持ちを味わうかなどはまったく気にもとめません。ちゃんと考えてください!愛とは遊びではないのです。繰り返し言いますが透き通った良心のないまま、手紙を書くのはやめてください。そんなことをされては、僕は君が恋しくて死んでしまうに違いありません。」

 

 そして、「永遠に君のもの ジョン・キーツ」と署名されています。キーツのファニーへの愛情はしばしば嫉妬に変わりました。そのため、ファニーの死後には「彼女は浮気性で外見だけの火遊び好きだった」という評判が広がったようです。でも、それが事実であったと証明するものはありませんでした。

 

 事実が示しているのは、彼女はキーツが1821年に亡くなると、1820年代を一貫してキーツの喪に服したこと。それから、キーツの遺言の通りに彼の姉の友人となったこと。その後、1833年にファニーは裕福な商人と結婚したそうです。

 

 さて、本書の冒頭には、「今はもうラブレターを書く人もすっかりいなくなり、ロマンスはEメールに殺されてしまったなどと言われることもあります」と書かれています。たしかに、現在はメールでのやり取りがコミュニケーションの主流になりました。職場でも私生活でも、パソコンメールや携帯メールが大活躍しています。メールは時間や場所を選ばず、思い立ったときに仕事の内容や自分の気持ちを伝えることができて、とても便利ですね。

 

 しかし、注意しなければならないことがあります。それは、人をほめるとき、叱るときなど、相手の心を直撃する言葉はメールに向かないということです。そんな場合は実際に会って口頭で言うことが1番、どうしても会えないときは電話が2番。特に、怒っているときにメールで怒りを伝えるのは絶対にやめたほうがいいですね。

 

 なぜなら、メールとは記録が残るものだからです。「怒り」というマイナスの感情がいつまでも残されるのは避けたいものです。ほめるときも同じ。メールでは細やかな感情がどうしても表現できません。たとえ、顔文字や絵文字を使ったとしても、です。

 

 相手が喜んでくれるような言葉は、自分の肉声で伝えたいものです。

 

 もちろん、愛の告白も!