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三島由起夫の家』

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No.0043

 

 澁澤龍彦が住んでいた家は、北鎌倉にあります。

 書斎を中心としたその様子は、『澁澤龍彦をもとめて』(『季刊みづゑ』編集部編、美術出版社)に詳しく紹介されています。同じ版元からは、澁澤の同時代人だった三島由紀夫の自宅の写真集も出ています。

 『三島由紀夫の家』(篠山紀信著、美術出版社)です。 最近、ちょっと世間を騒がせた巨匠・篠山紀信が現代文学の巨星・三島由紀夫の自宅を一気呵成に撮り下ろした贅沢な写真集です。

 その書斎、応接間、玄関ホール、庭園などの写真をながめていると、どんな三島の小説を読むよりも、彼の内面を見ることができる気がします。

 澁澤龍彦といい、三島由紀夫といい、まさに「家は人なり」なのかもしれません。

 わたしは高校の頃より三島に心酔していましたので、ロココを基調とした三島邸にも憧れていました。ナルシシズムが溢れた過剰なまでのデザインは一種の悪趣味とも評されました。でも、その過剰さゆえに、その悪趣味ゆえに、三島邸は三島邸なのです。たまらなく、デモーニッシュな魅力を放っています。

 わたしは、現在の住まいである築80年以上の超ボロ家に移り住んだとき、少しでも敬愛する三島の家に近づけたいと思いました。

 たとえば、三島邸の玄関にあった"星のシャンデリア"と同じものを探しまわりました。たくさん骨董店をまわりましたが、どうしても同じものは見つかりませんでした。でも、タイプの違う"星のシャンデリア"を見つけ、それを自宅の玄関に取り付けました。 おそらく、三島のシャンデリアはフランス製、わたしのそれはイギリス製なのでしょう。

 わたしが特に心を奪われたのは、三島の書斎でした。もちろん膨大な蔵書もそうですが、一番の関心は書斎の扉の内側に張られた鏡でした。

 どんな本好きも、自らの書斎を本で埋め尽くしたいと思うものです。それこそ、まったく隙間のないくらいに。
いくら、すべての壁を書棚で埋め尽くしたとて、唯一、本のない壁面が存在します。そうです、扉です。

 扉には本を並べることができません。 しかし、愛書家の三島はなんと扉の内側に鏡を張ったのです。 そうすれば、机の前で座っている自分の目からは、鏡に他の書棚の本が映る。つまり、すべての壁面が本で飾られることになるわけです。 まるで江戸川乱歩の「鏡地獄」の世界ですね。

 しかし、そこは本好きにはこたえられないユートピアと化すのです。 三島の真似をして、わが書斎の扉の内側にも鏡を張りました。 こうして、わたしは書物の魔道に踏み入ったのです。

 このように、わたしの「こころ」は三島由紀夫によって呪いをかけられたのです! わが社の祭神を孔子とドラッカーとするならば、わが家の祭神は三島由紀夫と澁澤龍彦ということになるでしょう。

 さて、三島邸は、東京は大田区の馬込にあります。親しくさせていただいている第一交通産業の田中亮一郎社長のご実家も馬込で、同じ町内だそうです。 田中社長は幼少の頃、三島邸の庭でよくキャッチボールをしてもらっていたとか。 う~ん、ウラヤマジイ~!!

 本書には、三島が所持していた多くの古い写真も掲載されています。その中に、三島邸で開催されたダンス・パーティーの写真があります。そこに、ものすごい美少年がスーツ姿で写っています。その美少年の名は、丸山明宏。そう、若き日の美輪明宏さんです。

 もう12年ぐらい前、美輪さんが松柏園ホテルにお越しになられたとき、いろいろとお話させていただきました。

 わたしが本書をお見せすると、美輪さんは手に取られて、なつかしそうに目を細めていらっしゃいました。