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澁澤龍彦 ドラコニア・ワールド』

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 No.0041

 

 澁澤龍彦 ドラコニア・ワールド』澁澤龍子編(集英社新書)を読みました。

 

 著者は、フランス文学者、作家、エッセイストとして活躍した才人です。

 幻想文学、悪魔学、博物学、異端美術、人形愛、エロティシズム論・・・・・澁澤龍彦は多くのものを日本に紹介しました。

 そして、文化のさまざまな局面に力強いくさびを打ち込みました。

 読書人から圧倒的な支持を受けた彼は、三島由紀夫の同時代人でもあり、その死後もなお光彩を放っています。 彼の書斎を中心とする「龍彦の領土」を自ら「ドラコニア」と名づけ、そこに大量の書物とオブジェを置きました。

 本書は、今も息づくそれらのオブジェを、沢渡朔による写真と、澁澤龍彦自身の文章で構成した、ドラコニア・ワールドの「オブジェ編」となっています。ちなみに「書物編」は、『書物の宇宙誌 澁澤龍彦蔵書目録』(国書刊行会)としてまとめられています。

 もともと、「オブジェ」というテーマは、「サド」や「エロティシズム」と並ぶ澁澤のメイン・テーマの一つでした。そのオブジェに対する愛情は、『夢の宇宙誌』『胡桃の中の世界』『思考の紋章学』『幻想博物誌』(いずれも河出文庫)などの著書に溢れています。

 本書の冒頭に、龍子夫人が「ドラコニア・ワールドに遊ぶ少年」というエッセイを書いています。そこで、亡き夫は観念の人であったとして、「『フローラ逍遥』で、自分は観念の人だからと書いていますが、直接触って育てなくても、イメージとしてその花が浮かべば、実際に種から育てているような気になったようです。そこがご自分のお庭で植物を育てていらした林達夫さんと違う、とよく言っていました」と述べています。

 澁澤龍彦は、この『フローラ逍遥』で参考にした図鑑をとても気に入っており、「やっぱり植物は図鑑に限るね。本物もいいけど植物画がいいよね」と言っていたとか。

 ヨーロッパをまわっていたとき、長らく画集で何度も見てきた絵の実物を見ても、「なんか画集の方がいいね」ということもよくあったようです。

 龍子夫人は、「でも、観念の人とはいっても、抽象画は好みませんでした。からっとした形、イメージの湧く物が好きです」と述べています。

 本書の中には、澁澤龍彦が愛した「からっとした形」や「イメージの湧く物」がたくさん出てきます。髑髏、石笛、プラトン立体、貝殻、標本、時計、凸面鏡、仮面、地球儀、ルーペ、花札、独楽、日時計・・・・・彼の影響を多大に受けたわたしの書斎にも、それらのほとんどが置かれています。

 ただ、澁澤龍彦が所有していて、わたしが持っていないものがいくつかあります。

 たとえば、古代アラビアの天体観測用の器械である「アストロラープ」。

 たとえば、砂時計のような形をした独楽(こま)である「輪鼓(りゅうご)」。

 たとえば、瓶に入った美しい玉虫の標本。

 たとえば、月と女性のシンボルである子安貝。

 そして、きわめつけは、四谷シモンの人形。

 いつの日か、わが書斎をドラコニア・ワールドに近づけたい・・・・・。

 わたしの夢の旅は続くのでした。