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地上最強の生物は誰だ!?』

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No.0006

 

 わたしは三度の飯より格闘技が好きで、かつては「格闘技世界一決定戦」の頃のアントニオ猪木に憧れていました。猪木が柔道のルスカ、ボクシングのアリ、空手のウィリーらと闘った試合には血沸き肉踊らせながら応援したものです。

 わたしの「一条真也」という名前のルーツは「一条直也」です。

 梶原一騎原作の「柔道一直線」の主人公の名ですが、一条直也も柔道家でありながら、相撲や空手やボクシングの選手と他流試合をよくやっていました。 そういえば、柔道小説の金字塔である富田常雄の『姿三四郎』にも、力士や唐手の使い手との立会い場面があったと記憶しています。

 異種格闘技は、大いなる男のロマンです。猪木に憧れていた頃、いつか「世界最強の男」になるという夢を見て、せっせとトレーニングに励んできました。30代の頃まではそれなりのマッチョでした。 そんな自分の衰えた肉体を見て、ため息をつきながら、スポーツクラブの帰りにコンビニに寄りました。わたしはコンビニで売られているコミックが大好きなのですが、そこで衝撃的な本に出会いました。

 相原コージの『真・異種格闘大戦 地上最強の生物は誰だ!?』(双葉社)という本です。分厚くて522ページもあるのですが、面白くて一気に読みました。

 この作品の冒頭では、「THE 最強」という格闘技トーナメントが開催されます。それは、ボクシング、相撲、柔道、レスリング、伝統空手、フルコンタクト空手、サンボ、キックボクシング、ムエタイ、カポエラ、テコンドー、モンゴル相撲、中国拳法、日本拳法、太極拳、プロレス、古流柔術、ブラジリアン柔術、合気道、総合格闘技、バーリ・トゥード、軍隊格闘術、地下格闘技、ストリートファイト・・・・とにかく、全世界のあらゆる格闘技の現役チャンピオン64名が参加して争われる究極の最強決定トーナメントでした。

 この前人未到のトーナメントを制したのは弱冠18歳の日本人、強矢鋼でした。人類史上初めて世界中の誰もが認める真の「地上最強の男」となった鋼は、一種の虚脱感に包まれます。
 そんな彼のもとに謎の覆面男が現れ、鋼はアフリカ大陸の奥地に連れていかれます。そこでは、なんと「地上最強の生物」を決めるトーナメントが開催されようとしていたのでした。地球上のあらゆる地域、あらゆる生物の中から、特に厳選された16の最強生物が「地上最強」の座を賭けて、闘いを繰り広げるのです。

 参加する生物とは、ライオン、トラ、アフリカゾウ、アナコンダ、ナイルワニ、ヒグマ、マウンテンゴリラ、インドサイ、カバ、スイギュウ、ヒクイドリ、クズリ、オオカミ、シマウマ、イヌ、そしてヒトです。

 果たして、トーナメントの結果は? それは読んでからのお楽しみですが、意外な展開の連続に時間の経つのも忘れました。 生物たちのキャラも立っていて、食物連鎖からの脱却をたくらむシマウマの革命家「チェ・ゼブラ」などは素敵すぎます! 相原コージの往年の名作『かってにシロクマ』のシロが登場するのも嬉しいサービスでした。

 本書にはシートンの『動物誌』などの引用も見られるように、本格的な動物の知識が満載で、ずいぶん動物の生態に詳しくなれます。また、実在の生物のみならず幻獣まで出てくるので、一種の「博物誌」的要素もあります。とにかく、こんなにスケールが大きくて面白いコミックは久しぶりです。

 1回戦は、カバ対ヒトだったのですが、カバがヒトに対して「おいヒト、野生をなめんなよ」と言い放つ場面があります。 そして、カバは「俺達の闘いはお遊びじゃねーんだ」とも言います。
 そうです。狂言回し的存在のオリバー君(なつかしい!)が本書で解説しているように、人間にとって「強い」ということは数ある価値の一つに過ぎません。

 「強い」以外にも、「頭がいい」「金持ち」「美しい」「面白い」「権力を持っている」「芸術的才能がある」「性的魅力がある」などの価値を人間は大切にしています。しかし、野生においては「強い」ということが唯一絶対の価値となります。

 なぜなら、野生においては「弱い者」は「強い者」に食われます。「弱い者」は自分の遺伝子すら残すことができないのです。本書は、ある意味で、「万物の霊長」という人間の驕りを打ち砕く衝撃の書です。
 リュウグウノツカイもそうですが、自然界の奥深さは本当に計り知れません。みなさんも、コンビニで見つけたら、ぜひお買い求め下さい。 きっと、定価619円が安すぎると思えるはずですよ。